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半世界のchinsukoのレビュー・感想・評価

半世界(2018年製作の映画)
3.8
生を成す人間の世界観とは

とある片田舎で炭焼き職人として働く紘と、自動車販売業の光彦のもとに、旧友の元自衛官の瑛介が帰郷した所からドラマは始まる。

紘は職人である故、息子から無関心と取られ疎まれている。実際良い父ではないが、職人の本分はこなしている。
瑛介は自衛官時代のトラウマが原因で帰郷して来たが、旧友との再会で昔の自分を取り戻す。
しかし、ある日光彦の自動車店でトラブルが発生し、居合わせた紘と瑛介が駆けつけ、カッとなった瑛介が相手全員を伸してしまう。
この出来事を悔やんだ瑛介は、紘に過去にあった出来事と心にある蟠りを話す。


瑛介は紘に「見てる世界が狭い奴には分からない」と言うが、紘の世界は狭いかも知れないが、職をこなすのが本分であるため、これで良いと思う。ここで言う「狭い世界」とは、社会の出来事に精通する事では無く、経験値の多さの事と受け取れる。
瑛介は自衛官として色んな場面に遭遇し、辛い思いをして来たのだろう。しかし同じ事を紘に求めるのは違うはずだ。


本作は、人間が生を成す上での世界は大小あるが、少なからずそれは繋がりがあることを感じさせる。

旧友がいて話せる人はそれだけで幸せではないかと、思ったりする。

印象的なのは、炭焼き職人の営みを淡々と描くシーンに郷愁や安堵を感じたこと。

自然を相手にする職業は廃れつつあるかもしれないが、無くして欲しくないと思わせられる。
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