ジェイコブ

半世界のジェイコブのレビュー・感想・評価

半世界(2018年製作の映画)
4.0
とある地方の田舎町に住む幼馴染の絋と光彦。絋は父親から継いだ製炭業、光彦は実家の中古車販売店を生業としており、時代の流れに翻弄されながらも懸命に生きていた。そんなある日、かつて自衛隊に入るために町を出た幼馴染の瑛介が帰ってくる。久々に幼馴染の仲良し三人組が揃うと喜ぶ絋と光彦だったが、瑛介はまるで人が変わったように静かだった……。
稲垣吾郎主演のヒューマンドラマ。日々の仕事に手一杯で妻や息子に無関心となってしまった絋が、心に深い傷を負って帰ってきた長谷川博己演じる瑛介との再開を通して、今まで気付かなかった周りの人の思いや忘れていた子供の頃の気持ちを思い出していく。瑛介もまた、絋や光彦に励まされ、一緒に馬鹿をやることで閉じこもっていた自分の世界から脱却していく。
人と人との関わりが、その人の生きる「世界」を変える。自分だけで見る世界というのは不完全なものであり、周りの人の事を知り、気持ちを理解することで初めて完成される。明がいじめっ子に反撃をした際、ボスの堅田が言った「俺も前の学校ではお前みたいだった」や、父親に反発する明に対し、瑛介が言った「絋が今の仕事をやってるのは、父親への反発からだ」など、他の人が抱える世界を知れば、自分の視野も広がり、やがてその人の世界も変わっていく。
瑛介と出会い、関わった事で、明は父親ときちんと向き合うこと決めた。明がいじめっ子に立ち向かうために使った武器が自分のいじめられた原因でもある「炭」であった事が。それは瑛介から戦い方を教わったが、明は父親の作った炭を武器に戦った。ラストで、自分の進路を決めた明が、父の仕事場で行う「トレーニング」がまた感慨深い。
本作と似たような田舎に住む身としては、時代とともに廃れる業種と、閉塞感漂う町の雰囲気を生々しいほどに感じてしまい、見ていて複雑な心境に陥った笑