ボブおじさん

芳華-Youth-のボブおじさんのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
4.1
1976年の中国。17歳のヒロインは兵士を慰労し鼓舞する軍の〝文芸工作団〟(文工団)に入団する。農村出身で周囲と馴染めない彼女の支えは、一人の模範兵だった…
激動の時代に翻弄された若者たちの青春を描いた群像劇!

この映画は中国で文芸作品としては異例の大ヒットを記録したが、その受け取り方は中国国内でも世代によって温度差があったようだ。当然日本でも意見は分かれると思う。

特に戦争映画の場合、国や立場によって描き方が異なる為、違和感を感じることも多い。

だが、この映画は戦争も背景としてはいるが、激動の時代を共に過ごした若者たちの青春映画として描かれている。

ポスターのビジュアルそのままに、映像が若く、躍動感に溢れ青春そのもの。色彩も鮮やかだ。
特に文工団による演舞は、息を飲むような美しさで見るものを惹きつける。
文工団に集まった少女と憧れのヒーローでもある模範兵のプラトニックな三角関係は、現代の日本人でも共感できる。

過酷な環境の中での甘酸っぱくもほろ苦い青春は、監督自身のスイートメモリーだろうか。日本でいえば戦時中にこっそりと恋愛をするようなもので、悲惨な時代でも楽しいこともあったのだろう。

そんな甘美な映像から一転、画面は戦場の地獄を描く。この戦争シーンの描写は驚くほど過激で、そのリアリズムは「プライベート・ライアン」を思わせる。ワンショットで撮られた戦闘シーンは、中国映画もここまでするのかとその迫力に圧倒された。

時代は進み文工団は解散して、彼らの青春も終わる。

激動の時代に取り残された彼らのその後は、決して恵まれたものではなかったが、ラストは一筋の光が見えたかのような余韻を残す。

検閲があるので仕方がないが、戦争の悲惨さは写しながらも政府批判にならないギリギリの線でバランスを取っている。
戦争批判を描いているわけではないので、見方によってはノスタルジックに当時を美化しすぎていると受け取ることもできるが、自分は好意的にとらえた。

映画は常に受け取る側の主観に委ねられるものだが、その時代を経験した者にしかわからない自分達の青春がそこには確かに描かれていた。

2019年11月に劇場で鑑賞した映画を動画配信で再視聴。