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芳華-Youth-のフェミ研ゼミのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
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タイトルの芳華という響き、字面、
メインビジュアルのあの美しさ。
映画の中にはなかった。
直接的な華やかさはなかったはずなのに
この映画を振り返ると全てにおいて光り輝いていた。


憧れの場所が色褪せて見える瞬間を見てしまった。
あんなに憧れていた、文公団の舞台。
衣装係ではなく踊り子として彼女は舞台で役をもらっても彼女は立ちたくなかった。

この場所は私の大切な、素晴らしい人を追放した人たちの集団なんだと。
かつて見えていた輝きは、いとも容易く輝きを失ってしまう。
失うのではないね、もともと輝いてなんていなかったんだ、と。
そんな風に白けてしまう。

戦争もあって、軍人として働き生きているだけで必死だったし、
彼女の才能は開花していたのに、誰もその華を見ることはなかったし、
彼の人間としての高尚さ誠実さを語る者は誰も居なくなっていた。

戦争が終わって、彼女と彼のしてきたことを社会は知らなくて。
ただの生活者として生きるしかなかったの辛かったな。
それに二人は恋でも友情でもなくただ知っている者同士で。
私はバカだから、この人と一緒にいたらお得だなとか考えて結婚しちゃうのに。
二人は戦友の墓参りをして、いつの時代も変わらないふたりのままで話していた。

かつて二人と共に青春時代を過ごした文公団の仲間たちは
いわゆる幸せな家庭を築いたり、それぞれの才能を生かして仕事で成功したりしていた。
そんな彼らは、戦時中には、英雄であった彼女と彼の不器用ながら真面目に慎ましく生きる姿を見て
どう思っただろう。
時代に順応して器用に生きる仲間たちはあの頃の自分たちを懐かしむ。
彼女と彼はあの頃を懐かしく思うだろうか。
ふたりにとってあの頃は輝いていたのだろうか。
きっとふたりは今も輝いている。
誰に気づかれないだろうけど、心の中はピカピカのままだ。

誰にも知られず、見つけられなかったふたり。
すごく眩しい。
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