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ゴーストマスク -傷-の消費者のネタバレレビュー・内容・結末

ゴーストマスク -傷-(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

・あらすじ
韓国に留学でやってきた女性、美優
彼女にはもう一つ旅の目的があった
それは行方知れずとなった姉、美樹の捜索
街行く人々に話しかけて美樹を探していた彼女は整形外科医の女性、ハナと出会う
そしてハナは美優を自宅へと招き入れ居候する事になる
しかしそんな風にハナが美優に親身に面倒を見る事を良く思わない存在がいた
ハナと同棲している恋人の女性、ヒョシンである
やがてヒョシンの隠された正体が明らかになると共に美優とハナは悲劇に巻き込まれていき…
という日本の都市伝説の代名詞、口裂け女を下敷きに美容整形をテーマとして製作された日韓合作のヒトコワ系ホラー作品

・鑑賞理由
都市伝説ホラーを続けて観ていてこちらも元祖都市伝説とも言える口裂け女を題材としているので気になって鑑賞

・感想
口裂け女の話には美容整形の失敗で口が裂けた女性という説もあるので整形大国である韓国と絡めて女性の情念と狂気、そしてそれらを孕ませた過去の悲劇、というのは良いテーマだと思う
ハナがインタビューで語っていた「美容整形は人と巡り会う為の物」という言葉も後に描かれていく美優、ハナ、そしてヒョシンとして第二の人生を送っていた美樹がそれぞれ異なる愛する人への執着の前フリとしてちゃんと効いていた

・美優に恋人と父を奪われた過去と彼女との容姿の差から抱くコンプレックスから自らを受け入れてくれたハナに美樹が向ける執着
・死んだ恋人、ヒョシンが忘れられず車の衝突事故で怪我を負わせてしまった美樹を彼女そっくりに顔も声も整形したハナの美樹への執着
・自分の容姿を褒めてくれた美樹を奪われたくなかった為に彼女の恋愛を破綻させようと美樹の彼氏だった柄澤に言い寄った美優の姉への執着
三者三様の執着が重なり合うストーリーとその悲哀が招く悲劇が良かった
特に美優への嫉妬からハナに彼女を殺すよう求めるも拒まれた事で最愛のハナを殺してしまった美樹が美優の自分への愛を知って美優の大事な物を奪う為にせっかく手に入れたヒョシンの顔を口を自ら裂く事で破壊するラストは凄く物悲しい

ただ逆にそれらの悲劇を人間臭く描いていた事から恐怖はさほど感じられずそこが若干惜しくもある
とはいえホラーとしてではなく純粋に悲劇のドラマとして観れば十分に魅力的で惹き込まれる部分もあった
暴走した美樹がハナに続いて韓国にやって来た腹違いの妹、紗英の殺害を皮切りに逃げる美優を追う中で街行く人々を次々に殺していった場面での通りに佇むいくつもの遺体という画はホラーとしての良さもあったけど
自ら口を裂いた後に満を辞して美樹が口にする「私キレイ?」という口裂け女の決まり文句も恐怖と悲哀を上手く兼ね備えた演出だった

・総括
この手の都市伝説を題材としたホラー作品は恐怖の源泉となる存在をモンスター的に描く方向性に走ってしまう事も少なくない中で安直にそうせず深みのある物語に仕上げた世界観が結構好みだった
パケ写の裂けた口のビジュアルがチープだからこその自分が苦手とする怖さがあって観るのをしばらく躊躇していたけど観て良かったと思う
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