ベルサイユ製麺

修羅:黒衣の反逆のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

修羅:黒衣の反逆(2017年製作の映画)
3.5
“明”

手元のメモに、ただ一文字だけ書いてある。
自分は設定等がややこしそうな映画を観る時はメモを取(ろうとす)る習慣があるのだが、今作に限ってはこの一文字のみ…。作品全てがこの一文字に集約できる、のでは無く、速攻でメモを、いや理解を諦めたのである。超弩級の固有名詞の嵐!!!もはやそれが人名なんだか地名なんだか実在なんだか架空なんだか真実か挑戦か皆目見当がつかない…。取り敢えず冒頭に“明”朝と出たので、それだけ書いたのです。
分からんちんに更に追い討ちをかけたのが、冒頭での戦場のシークエンスのあとに映し出されたタイトル。
『Brotherhood of Blades 2』! 2ー!!!
い、遺憾っ!なんかの・続編・かぁいっ!圧倒的諦め!!

…でも書くよ。
全力でストーリー解説します!
〜明朝とかなので、だいぶむかし。
凄く荒々しい大きな争いがあって、なんやかんやの結果打ち解けた男が3人。名前はみんな難しい漢字で覚えられなかった!(観ているわたくしが、です)その他はだいたいみんな死んだ。尖った物や重いものが大事なとこに当たったのだ。
死ななかったみんなはそれぞれがんばったから、後にまあまあ偉くなったり、凄く偉くなった者も居た。主人公もまあまあ偉いマンなのだが、流れでどこかの超絶偉いマンに嵌められたような印象だ!ど汚い奴が居たもんだ!
主人公はなんか良かったのか絵描きの女を守るために追われる身になった。都合で人を殺したりもしたからやむを得まい。昔であっても、偉くても、人は殺してはいけない。だいぶ後味が悪いからだ!
道中さまざま出会いがあって、意外そうな顔もした。どう意外だったのかは分からないが(観ているわたしには、です)。最終的に画面の奥の方から悪い奴等がどわっと来たから、手前の山がちな方に馬に乗って逃げた!仲間には途中まで敵だった奴もいるのです!主人公の男は女を守る為に命懸けで頑張ることにした。そういえば剣の腕は自慢なのだ!たしかに最初からそうだった!

…何となく御理解頂けたと思いますが、なかなか良くできたお話ですよね。中華系大作にありがちな行き当たりばったり感、力尽くで何とかする感は全く無くて、凄く丁寧に書かれた脚本だと感じました。序盤の固有名詞飛び交う展開が理解できないのは、いきなり『2』を観ているせいなのか、わたくしの脳がわたくしなんかの脳だからかは不明。
演技、演出も落ち着いてますし、撮影も美麗。中華大作で毎回感じるのは衣装や舞台セットの行き届っぷりなのだけど、あれは作品ごと、個別に作ってるのでしょうか?それとも中国にはスーパー太秦映画村みたいところがあるの?とにかく細密だし、セットの実存感凄い!
あと、吾輩の様なおこちゃまにはアクションシーンが(メッセージ性とかおっぱいとかよりも)重要になってくるのですが、これは平均以上だと思います。中盤の一騎打ちシーン最高でした。変な武器出ます!映画に出る変な武器には美麗なおっぱいより心を掴まれますね!…審議。
どうやら最近の中華アクションの流行りのムーブは、“上体反らしのスライディングで刃物を避ける”と“格ゲーみたいに相手の位置を軸にしてザザッと回り込む動き”ですね。まあ、どっちもムダな動きです…。それより、“周りを取り囲むそれなりの強者が、剣豪1人に太刀打ちできない”の納得できる描写を誰か考えて欲しいな。何処かで説得力のある表現をご覧になられた方いらっしゃいましたらご連絡いただけると幸いです。
後半のチェイスシーンの、アクション周りもさる事ながら、劇伴やキャラクターの言動にポツポツと『マッドマックスFR』の影響が窺えて、それがチョイパクとかでは無くて、真っ向から『MMFR』を換骨奪胎しようとしてる様に思えて好印象でした。自分は未見なので分かりませんが『バーフバリ』の影響などもあるのかもしれませんね。
全体的なクオリティはとにかく高く、中国映画独特の結界感、カルチャーギャップみたいなものは感じませんでした。即ち普通の意味で良作である。
こればっかりは何度悔いても仕方ないけど、1本目から観たかった…。なんて思ってると、エンドロールの最後に、マーベルなどでお馴染みの自回作へのブリッジが!うおおぉ!次はタイトルに『3』て書いてね!何卒!