どらこ

ヘレディタリー/継承のどらこのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.3
僕が見た中で最も「邪悪」な作品。良い意味で最高に気持ち悪い。
それはグロいとかキモいとか視覚的な気持ち悪さじゃなく、全体的な空気感と演出がただただ恐ろしい。
膨大な伏線と醜悪な悪魔学が特徴的。



祖母が亡くなってから、家には怪奇現象が起き、主人公の女の子の様子が徐々におかしくなり奇怪な行動ばかり取るようになるが、それにはある理由があったというのが大まかなあらすじ。

ミッドサマーを手がけたアリ・アスター監督の作品。精神汚染系のホラー映画筆頭。
ミッドサマー同様、宗教的な恐ろしさと人間の内在する狂気が淡々とに描かれている。
この監督、そういう表現が上手すぎる。


まずチャーリー役の女の子、顔が怖すぎ。特殊メイクだと思ってたけど現実でもあの顔なのは流石にやばい。
パッケージもそうだが、ここまで不安になる顔はなかなか珍しい。

あとおにぃちゃんさ、クラスの飲み会に小さな妹連れてくのはヤバい。
妹がお荷物になるのは当然だし、妹は妹で知らない人しかいないパーティーに一人で放置されたらテンパるの当たり前だし、色々と胸が痛くなるシーン。海外ではあれが普通なのかな...
結局あれのせいで最悪の結末を迎えるし….

劇中にたびたび登場する単語「ペイモン」は、ソロモン72柱(ゴエティア)に記載されている悪魔。
この映画ではこの「ペイモン」について詳しくないと内容が分かりづらい。

ペイモンのイラストを見れば分かりやすいが、首を三つぶら下げている。
精神が疲弊した男性の肉体を触媒とし、臣下の首を三つ捧げることで正式に降臨できるっぽい。
ペイモンに忠実な信者たちは、その働きの対価として富や名誉、知恵が与えられるらしい。

祖母、セミナーにいたババァ、ツリーハウスにいた基地外たちは全員カルト信者。

チャーリーの首が切断されるのも偶然の事故ではなく必然で、その証拠としてあの電柱にはペイモンの紋章が刻まれている。
事故を誘発させる効果のノロイの紋章が。

ママの職業であるミニチュアだが、一番最初のシーンで精巧なミニチュアの一室をズームしてからそのまま実際の部屋に繋がるシーンがある。
これはペイモン目線で監視されている描写で、現実世界もペイモンにとっては自由自在に操れるミニチュア世界であるということ。

そして漂う謎の光は触媒を探すペイモンの魂。

とまぁ、2週目を見ると、あまりにも多い伏線の多さにビビる。



1回目では見てる最中も見終わった後も「意味がわからない」。
ただただ不気味で不快感(良い意味で)が付き纏う素晴らしい作品でした。
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