湯呑

ヘレディタリー/継承の湯呑のレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.6
当初、『A GHOST STORY』に4.6点を付けていたのだが、同じA24プロダクションの作品である本作があまりにも素晴らしい為、相対的に少し点数を下げさせてもらった。
黒沢清や清水崇のJホラーが、ハリウッドの若手監督にどれほどのインパクトを与えたか、本作を観てもその影響力の強さを感じるが、何よりも素晴らしいのは主演トニ・コレットの演技だろう。こうした作品の場合、次々と起こる怪現象が実際に起きている事なのか、それとも精神を病んだ女の妄想なのか、という点をあいまいに描いた方が面白い。そのあたりのバランス感覚が非常に巧みで、トニ・コレット自身はホラー映画は怖くて観れないらしいが、少なくとも作り手としてはその肝がよくわかっている様だ。
私が『A GHOST STORY』より本作を高く評価するのは、そのストーリーのいい加減さである。なるほど、最後にそれなりのオチは付くのだが、観終わった後にじゃあれは何なんだ、とひとつでも疑問を抱くと次から次へと矛盾点が吹き出して、本作のプロットが適当にでっち上げたストーリーにもっともらしいオチをくっつけただけである事がわかる。最初から最後まで考え抜かれた『A GHOST STORY』がいささか息苦しさを感じさせるのに比べ、本作のデタラメさは何とも風通しが良い。ダリオ・アルジェントの傑作『インフェルノ』に比肩する、というのは言い過ぎか。とにかく、肝さえ掴んでいればこんなにいい加減でも映画は作れるのだし、傑作になり得るのだ。
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