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ヘレディタリー/継承のmasayaanのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.2
尊敬するシネフィルガチ勢某氏の『ミッドサマー』絶賛レビューで「誰やねん」となり、リハビリを兼ね、主要メディアの年代ベストをスクロールしていくと、どこにでも出てくる『ヘレディタリー』に、またしても「誰やねん、アリ・アスターって」を繰り返す。最後まで観れないだろうなあ、と思いつつ、普段は近寄らない「ホラー」コーナーでそそくさと用を済ませてきたのであった。

結論から言って、これは劇場で見逃していて本当に助かった(身近なところでやっていたのかどうか知らんけど)。いやあ、命拾いしたねこれは。集中力を上げるため、普段は部屋の明かりを最小限まで落として観ているわけですが、これは出足の10分程度でギブアップ。限界まで照度を上げた白昼色で恐怖を飛ばしながら、なんとかあの牧歌的なエンドロールまでたどり着けました。

数あるジャンル映画の中でも、できれば存在しないものとして接していきたい「ホラー」。普通に怖い、苦手だからなわけですが、この2時間でマジで寿命が縮んで、血圧も上がって、なんとなく髪が減って白髪も増えた気がする。何かが起こってくれる方がむしろ助かるほど、それまでの「間」が耐え難い。もちろん、こうした演出の濃淡はホラーとしては定石通りなんだろうけど、それでもね。

被害妄想と幻聴が、最初はゆっくりと、不規則に、そしてやがては指数関数的に激しく、現実世界と入れ替わり、演出のテンポを落とさぬよう、昼は一瞬で夜となり、あらゆる猶予が奪われていく。とんでもない焦燥。妄想と幻聴は、霊的なものでもあり、精神疾患的なものでもある。すなわち、「当人からすればそっちの世界がリアルそのもの」という切迫感が見事に表現されている。

そして、最後の「降臨」のシークエンス。うわーやられたと笑いつつも、サイケデリック!と訳も分からず叫んでしまったよ。人には絶対にお勧めできない傑作カルト。欲を言えばあと10分、どこかで削れたか。
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