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サタデー・フィクションのnyasuke33のレビュー・感想・評価

サタデー・フィクション(2019年製作の映画)
4.3
前髪を切りそろえたコン・リーが若々しい。マーク・チャオに年齢を重ねた感があって、2人がお似合いだったのは予想外。だからこそ嬉しい!戦時中の魔都上海はモノクロ画面がぴったりで、時折ぶれるカメラ、やたら打ち付ける雨音、汽笛の太い響きが胸をざわつかせる。音の使い方が古典的で、好きだ。

劇中劇での台詞字幕には「””」が使われていたが、そこから続く物語はだんだん曖昧になっていく。今のは芝居?それとも現実?ユー・ジンは舞台に出演するために上海へ。劇作家タン・ナーと一緒の時は可愛い。でもスパイとしての彼女は容赦ない。怪我した古谷の意識の中に入りこむような魔性にはぞくっとした。

計画通り劇場に寄らず出国していたらこの物語は成立しなかったのだ。「情が深い」ことは命取り。それでもいいと彼女は最初から決めていたような気がする。エンディングでは舞台の準備風景が映し出され、そのままオープニングにつながっていく雰囲気。永遠に終わらない舞台劇を、ひと時の間見せられていた気分である。
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