おかちゃん

サタデー・フィクションのおかちゃんのレビュー・感想・評価

サタデー・フィクション(2019年製作の映画)
3.2
凄く高レベルで構成されたスパイ映画だった。 安っぽい米国ハリウッドのドンパチ映画に比べて全然面白かった。 ガンファイトを十分に楽しむこともできた。

 物語は、ハニートラップを軸に緊迫した国際情勢の元で各人物の政治的立場と恋の駆引で構成される。筋立ては、所謂グランドホテル形式を模し(ホテルと劇場の2拠点で、登場人物はスパイ達だから絡み合い、厳密にはチョッと違うが・笑)、更に劇中劇を採り入れているので、前半の筋立ては混乱しやすい。各国要人が出入りする魔都だから台詞の言語も様々なのだ。
けれど、作戦が始まりそこからのドンパチは、単純明快。コン・リーや中島歩のheel役を存分に楽しめた。

 私の鑑賞中の興味は、キャセイホテルと蘭心劇場の2つの建物の歴史的&文化的現物セットだった。白黒撮影なので今一つ建築美は見え辛い(歴史観を出す為の白黒だろうが、せめてセピア色位にして欲しかった…)。
以前、上海へ旅行した時に格安ツアーで行ったので、この2つの建物内に入る時間が出来なかった😭(孫文記念館は入ったけどね)。その穴埋めにもう少ししっかり見たかった。カメラワークは、ハンド撮影のヌーベルバーグ風な動きを多用しスパイ映画の雰囲気はよく出てましたけど…。

だけど、日本人を描くとこういうキャラになるのかね?
確かに日本帝国軍人は、一部の毅然と身を律した人は例外として、この地では余り誉められるような行いはしていないのだろう。しかし、こう晒すように描かれると同胞として、情けなさを禁じ得ない。亜細亜の中で日本人はこの様に受け止められている事を覚えておいた方がよいと思う。
あと、「真珠湾攻撃の暗号解読」も歴史上の謎として歴史書物にも頻繁に取り上げられるが、実際このような混沌とした租界地なら「あったかもね」と想わせるネタではある。

何れにせよ、多くの知的興味を刺激しつつ1級のスパイ・アクション映画だったので◎