紫のみなと

5時から7時までのクレオの紫のみなとのレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
4.0
のっけからクレオに目が釘付けでした。

ザ・フレンチギャルとでもいうようなクレオの全身…水玉のワンピースにハイヒール、ブロンドに、そしてそしてバスト!どうやってあんなバストの線を作っているんだろう?と、過去にもフランス映画でいつも不思議に思っていたバストラインの創造に思いを馳せました…

冒頭、カード占いのシーンはカラーでクレオの美しい指、美しい指輪に目を奪われているとそこらかのモノクロ。アニエス・ヴァルダのこのセンス、日本でいうと昭和36年、森光子の放浪記が東京で初演されています。
クレオの部屋でチョロチョロしてる仔猫の可愛さといったら…

心を打たれたのはクレオがピアノに合わせて歌うシーン。クレオのアップにクレオの深い深い歌声、楽曲の素晴らしさ。
若さの死、若者の死、かつて自分の眼前に拡がっていた未来の死、あの頃憧れた世界の消失、喪失、、、など様々なイメージが自分の脳裏をめくり過ぎていくような感覚。
ピアノ弾きを演じているのがミシェル・ルグランということを、映画を見終わって知って衝撃でした。ミシェル・ルグラン、なんてかっこいいんだ!そんな容貌で「シェルブールの雨傘」作ったのか…
ちょっとルパート・グレイヴス(懐かしい)を髣髴とさせる。道理でピアノがうま過ぎると思いました。

映画の後半、クレオはブラックのワンピースで街を彷徨しますが、このワンピースにサングラス姿もめちゃくちゃいい。
クレオは肩幅がしっかりしたグラマーなので、歩く姿が堂に入っている。
(私は長年カトリーヌ・ドヌーブのレッキとしたファンですが、ドヌーブも色んな映画で巴里をさまよいますが、いかんせん幼児体型で歩き方に癖があるので、美観的にそれに気を取られていけない…)


ラスト、クレオの支えになった男がまるで女装したジャック・レモン(参照:お熱いのがお好き)に見えるのがどうしても気になりましたが、クレオの清々しい微笑みに救われあっという間に映画を見終わったことに気付くのでした。こんなラストだとは思いもよらずに。