はなたまご

5時から7時までのクレオのはなたまごのレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
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癌検査の結果を怯えながら待つシャンソン歌手クレオが、パリの町をそぞろに歩きながら人々と交流するお話。
死を意識すると何もかもが不吉に思えてくるという人間の心理が心象風景としてパリの町に現れている点が興味深かった。歌手として人々の目線を引きつけても、なんとなく目を逸らされているような違和感。自身と正反対の生を体現するような快活な友人。普段は目に入らないようなエキセントリックな大道芸人。それらすべてにぐるぐると頭を悩ませ、気分が一向によくならないクレオの様子はなんともリアルだった。だからこそ、気さくでロマンチックな兵隊さんの言葉が見ている者の気持ちも明るくさせてくれるのだろう。
自分のことで頭がいっぱいなときほど、人の話に耳を傾けてみるのが良いだろうか。ふとそんなことを考えた映画だった。