幽斎

キャビン28 ケディ殺人事件の幽斎のレビュー・感想・評価

3.0
C級スリラー(ホラー)をレビューする、Scavengerシリーズ第4界。原題「Cabin 28」の通り「Keddie murders」ケディリゾートのキャビン28番で起きたCold case、4重殺人事件の映画化。AmazonPrimeVideoで0円鑑賞。

「ケディ殺人事件」アメリカでは知らぬ者は居ない未解決事件。多くの遺留物と複数の目撃情報にも関わらず逮捕に至らない。度々テレビで特集が組まれ、警察も6人の潜在的な容疑者が居ると発表。本作は訴訟を恐れ冒頭で丁寧に免責事項を解説「これはフィクションで実話ではありません」生者や故人の遺族から訴えられた作品も有る。

本作はレビュー済「殺人犯ジョン・リスト」同じAndrew Jones監督。イギリス映画界では「地下の帝王」つまり劇場で絶対にお目に掛かれないスラングだが、本作もイギリス映画なのにアメリカのコールド・ケースが題材。日本の配給元トランスワールドアソシエイツは、Amazon日本支社の特命を受け、今日も世界からゴミ映画を集めてる(笑)。

ケディ殺人事件はハリウッドで映画化済。「ストレンジャーズ/戦慄の訪問者」セレブ女優Liv Tyler主演で結構売れた。続く「ストレンジャーズ/地獄からの訪問者」レビュー済だが、スリラー要素はゴッソリ抜け落ち、凡庸なホラーに堕落。基本的に事件をナゾるしか無く、絵的にもプロット的にも地味。身も蓋もない事を言えば、キャビンでリラックスした家族が、正体不明の仮面の無慈悲な殺人鬼に殺されるだけ、ツイスト不足にも程が有る。人が殺されても「あー、そうですか」しかない。

それでも「殺人犯ジョン・リスト」より随分とマシ。理由は監督が自ら資金を出した自主製作だから。ノンクレジットだが脚本も手掛け、ミステリアスなドライバーとして出演も果たす。監督作品の中では過去最高の出来かも、異論は認める(笑)。C級を超える事は無いが、例えばヒッチハイカーの導入部は、スリラーの基本に沿って、ミステリー小説で言う「Unpleasant tension」事件の幕が開くサスペンスを上手く表現してる。

「ストレンジャーズ/戦慄の訪問者」同じく理由なき殺人が根幹だが、遊び半分にダラダラ殺して逝く様は、不条理スリラーの無慈悲を再現。「Disgust」厭らしさを編み出した私の師匠Alfred Hitchcock監督、と比較するのはヤボだが、安易にホラーに逃げない演出は悪くない。勿論、ダメな処は分ってるだけで10個有る(笑)。「13日の金曜日」オマージュを沢山見つけたので、ファンの方は必見!。

問題なのは「尺」。イギリスのレビューを見ると初めは55分のテレビドラマ。しかし、残酷描写もエロも無いのに、多くの国でNR指定を喰らい、事情聴取のシーンを追加して長編映画の体だけは確保。時間稼ぎの進まないエンドロールも別な意味で必見!(笑)。

スリラー的に腰砕けの演出もご愛敬だが、クソ映画マニアには意外と暇潰しに為るかも。
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