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グッド・ヴァイブレーションズのデイのレビュー・感想・評価

4.7
魂揺さぶられる映画に再び出会えたという感想をまず一番に伝えておきたいです。

1970年代後半
北アイルランド紛争が激化する中、
北アイルランドの"首都"であるベルファストで
グッドヴァイブレーションズというレコード店を作り
やがて、パンクのレーベルまで立ち上げた
テリー・フーリーの実話。

北アイルランド紛争は
分かっていたものの、詳しくは分からなくて、
Wikiを読もうとしたけれど、長くて挫折。

カトリックやプロテスタント
資本主義者や社会主義者
の抗争どころか、
もう、理由なんて何でも良い…というような
メチャクチャな状況になっていたと思いました。

当時の本当のVTRが映画の中に差し込まれているので、とてもリアルに感じる事が出来るようになっています。

爆弾が投げ込まれたり、
簡単に人が殺されたり
いつもビルが燃えている。

街には銃を持った警察官や
軍の人間が立ち並び
広大なのどかな景色の中でも、空には軍のヘリが飛んでいる。

テリーは
若いバンドのライブを観て(曲を聴き)
(Teen Age Kiks - The Understones)
物凄く感銘を受けます。

それはテリーが
暴力では無く、"音楽"を通して
若者が世の中に訴えたい事を訴える事に
感銘を受けたから。
(歌詞も素晴らしい!!)

彼ら(The Understones)をメジャーデビューさせる為にテリーは奔走しますが、

ロンドンに行くも
「ベルファストから来た」
と言うだけの理由で、レコード会社の人間の眉が吊り上がる。

1970年代後半には
もう、ロンドンではピストルズもクラッシュもデビューしてて、
ベルファスト出身のパンク?
「一足遅い!!」
と相手にもして貰えず、突き返されてしまう。
 
テリーはめげない。
BBCで曲を掛けて貰うのに、受付嬢の前で涙を流してまで、粘りに粘る。

にしても、テリーの奥さんは寛大な女性ですね。
テリーが夢中になってしまったら、家族どころじゃ無くなってしまう性格。

それでも、離婚せずに(少しは揉めましたが)テリーを支えて行ったんだもの。

テリーのそういう一生懸命過ぎるところに惹かれたのでしょうね。

テリーが頭を坊主にした
ネオナチの少年達にレコード店で暴力を受けた後

テリーのパパの言葉が良かったです。
ベルファストを変えようと、何度も選挙に立候補するも12回落選。

テリーのパパが言う
「それでも、支持者は増えて行った。」

個人の力で、北アイルランド紛争を止める事など出来ないけれど、
それでも、テリーのパパは、選挙に立候補する事で
少しでも"この国"を変えたかったと…。

映画の後半のテリーを交えたライブシーンはサイコーのサイコーでした!!

私はテリー・フリーを知らなかったのですが
伝記映画になるほど、北アイルランドの音楽業界に影響を与えた人なのですね。

音楽で世の中を変える事は出来ないかもしれない。
でも、一人一人の意識を変える事は出来る。

北アイルランド紛争は1960年代から2000年まで約40年も続き、
3千人もの人々が亡くなった…
とありましたが、
もっとたくさんの犠牲になった人々がいるでしょう。

テリーのコメント
「NYには新しい髪型を。
ロンドンには新しいファッションを。
"ベルファスト"には生きる理由を。
"パンク"が教えてくれた。」

そして
The Clashのジョーストラマーは
「爆破と襲撃。宗教的な対立が渦巻く世の中で"パンク"は人々に生きる喜びを与えた。」
のコメントも流れて来ます。

ジョーストラマーは2002年に50歳の若さで先天性の心臓疾患で亡くなってしまいましたね…。
とても残念な事です。

今一度、クラッシュの曲を聴きたい気分です。

ラストクレジットの最後の最後まで観て下さい。
テリーと奥さまご本人の写真や、
The Understonesの写真等々。

それが終わっても、最後の最後まで、曲を聴いていたくって
この映画に浸っていたくて、
最後の最後まで、その場から動けなかったです。

パンクに興味が無いかたでも、音楽に興味があるかたは是非観てみてくださいね。

そして、その音楽が生まれた時代背景を知ると、尚更、愛おしい曲になる事でしょう。

知らなかったThe UnderstonsのTeenage Kiksも
もう、私の中で愛おしい曲となっています。
違う曲も聴いてみたいです♪

グッドヴァイブレーションズ レコード店は閉店して、また開店してを繰り返し
今はもう無いのかな?
でも、北アイルランドのパンクの聖地として、パンクファンが度々訪れていることでしょうね☺️。
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