くもすけ

グッド・ヴァイブレーションズのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

ベルファストパンクのゴッドファーザーの異名をとるテリー・フーリーの半生を描いたドキュドラマ。フーリーもベルファストパンクも知らなかったが(知ってるのはそれこそ「キックス」)、人懐こいフーリーの人柄押しで最後まで楽しく見られる。
合間に荒廃した市街の実際の映像をはさみ、スキンヘッズにどつかれながらも、理解のありすぎる妻に支えられて、店とレーベルをぶちあげてクソガキたちを熱狂させる。

ロンドンに売り込みをかけるときに、「訛は?」「戦車は?」と当世風アイルランドのシグニチャーを求められるが、フーリーが激推ししてるのは甘酸っぱく寂しいガキの歌。
惨敗して帰宅後便所にこもりディキンソンの詩集に逃避していると、ジョン・ファッキン・ピール・セッションズで「キックス」がかかる。それも2回続けて。

テリー・フーリーはハンク・ウィリアムスを敬愛し、シャングリラスをこよなく愛したが、ジョン・ピールの変化に触発されクソガキが残した聞き慣れぬ注文品「オーガズムアディクト」でパンクに出会う(ドールズを先に聞いていたかしらん)。

フーリーによればベルファストには、フェミ、マルクス、アナキ、など様々なイズムを持つ友達がいたのに、紛争を期にすべてカトリックとプロテスタントの対立に短絡されてうんざりしていた模様。政治にどのくらい関心があったかは不明だが、終始ピースマークを掲げて、店とライヴを脅かす治安機関と真っ向から対立した。

エンディングでその後のそれぞれの苦い(しかししぶとい)活躍が説明されていた。フーリーはまだご存命。
参考までにジョン・ピールは1939年生まれ、フーリーは1948年生まれ。二人を虜にした曲にまつわる後日談がある。
2001年にアンダートーンズのドキュメンタリーが製作されたときにジョン・ピールが「キックス」への想いを綴ったエッセイが以下https://www.theguardian.com/film/2001/nov/02/londonfilmfestival2001.londonfilmfestival
記事の最後で、自分が死んだら墓には歌詞の一節を刻むよう妻に言い残した、と結んでいる。04年に彼は死去し、望みは叶えられた。
Sheila, my wife, I wanna hold her, wanna hold her tight, knows what when I die, the only words I want on my tombstone, apart from my name, are: "Teenage Dreams, So Hard To Beat."