gintaru

ペンギン・ハイウェイのgintaruのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
3.4
DMM.TVのレンタル視聴。
思春期に入る手前の少年(それは乳歯が抜けるというシーンで象徴される)が歯医者に勤めるお姉さんや小学校の友人たちと繰り広げるジュブナイルSF&ファンタジー。
設定、世界観は面白い。突然ペンギンが街中に出現したり、森を抜けると謎の草原が広がりそこに謎の液体状の球体が出現する。きれいなお姉さんがいて、小学校には賢い転校してきた美少女がいる。
しかし、結局のところその謎は謎のまま、すなわちオチがない。
最初、自分はこれは異性に目覚める直前の少年の妄想、あるいは妄想と現実の交錯が繰り広げるストーリーなのかとも思ったが、どうもそうでもない。
結局謎設定、特にお姉さんの存在とは何だったのかを解決しないまま話は終わってしまう。お姉さんは「この謎を解いてごらん」なんて少年に話しかけるシーンがあるが、結局わからないまま。お姉さん自身もわかってないみたいなままで終わる。これじゃダメでしょ。ストーリー的には秀作とは言えない。
声優もお姉さんに蒼井優、お父さんに西島秀俊を使っているが違和感があった。西島秀俊の感情を出さない抑揚のないトーンは声優には向いてないと思った。蒼井優もお姉さん役にしては声が低くテンションも低めでキャラクターとミスマッチな感じだった。もっとエヴァのミサトさん役の三石琴乃みたいな人の方がいいのになあと思いながら見ていて、ハタと気が付いた。そう、お姉さんとペンギンと少年、そして終わらない夏、これはそのままエヴァの設定ではないかと。つまり、この作品はエヴァへのオマージュ作品なのだなと思った。エヴァにはミサトさんが飼うペンギンのペンペンが出てきて、ミサトさんはひたすら缶ビールを飲む。この作品でもコーラ缶が一つのモチーフとなっているところが印象的だった。
ついでに言えば、この作品はお姉さんの本棚に「鏡の国のアリス」があったり、その話に出てくる化け物が登場したりしてそれも一つのモチーフになっているようだ。
主人公の少年(アオヤマ君)は頭がよいと自負し、プライドが高く、やたら難しい言葉をひねくり回してしゃべる少年で、ただお姉さんのおっぱいには興味があるという設定だが、ちょっと抜けてるとか屈折してるとかの性格設定でもなく、感情移入しにくいキャラクターだ。個性的ではあるが、魅力的とは言い難かった。研究ノートに何でもつらつら記述したり絵を描いたりするのは、絵や字のうまさといい、漢字の多さといい到底小学4年生レベルではないなという感じだった。
少年がお姉さんに性的関心を示すという中では、もっと歯医者のシーンを描写すればいいのになと思った。歯医者で治療中に先生や歯科技工士の胸や顔が顔の間近に接近するというのは少年でなくてもドキドキする体験が誰にでもあるのではないかなと思った。
最後、こうした話では一つ主人公が成長した証を示して終わるということが多いが、この作品ではそういうことも見当たらなかった。映像は美しく、雰囲気はいいのだが、最後まで消化不良感の残る作品だった。
gintaru

gintaru