たかちゃん

がらくたのたかちゃんのレビュー・感想・評価

がらくた(1964年製作の映画)
3.7
「秘剣」につづいての染五郎主演の稲垣浩作品。稲垣の海洋ものなら数本あるが、船が難破してからの、離島でのサバイバルものとして観るなら異色作といえる。『流されて…』にも『グラマ島の誘惑』にも似ていない、公家、武士、役者、船乗りなどで繰り広げる、階級と嫉妬、信頼の物語。主人公は農民で一揆の仲間から裏切られている。豪商は元海賊といった過去がある。姉妹は悪女と心清らかな妹というように極端なキャラクター。斬り合いもあるが、死人は出ないし、ハッピーエンドなのも稲垣の優しさが伺えるが、悪を成敗してほしいという気持ちも残る。東宝スコープだが、寄りのシーンはビスタサイズになり、遠景はスコープになる。エンディングはスコープから画面が閉じる、アイリスアウトのようだ。この頃の稲垣は、低迷期にあったが、それなりに面白かったし、嫌いではない。『無法松の一生』や『手をつなぐ子等』の稲垣が、悠々自適な暮らしから生み出したような愛おしさを覚える作品だ。それでいてパワフルで、実験精神も衰えていないのだ。
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