Genichiro

嵐電のGenichiroのレビュー・感想・評価

嵐電(2019年製作の映画)
3.6
この間久々に大阪に寄って某ヌーヴォで映画を見終わったあと、たまたま同じタイミングで東京から来ていた劇場スタッフ?関係者?がヌーヴォのスタッフに話しかけているのを見かけた。「ヴェーラで〜特集関わってた***さんと〜、あと下高井戸シネマの***さんと飲んで盛り上がっちゃって〜、でもそのとき初対面だったんですけど〜」と上機嫌に話していた。しかしヌーヴォのスタッフの方の反応は「はーそうですか」ってな感じだった。笑いそうになった、そして「わかるわー」。東京の人(っつーかギョーカイの人)とヨソとのギャップというのものを大いに感じた。東京の映画/劇場関係者がアテネ・フランセのナンタラさんや下高井戸シネマのスタッフ、ヴェーラのキュレーターと仲良いみたいな感じで京阪神の劇場が一枚岩になってはいない。東京とは比較にならない小規模なマーケットだし、何より京都/大阪/神戸の間にある緩やかな隔たりを認識していないのだろう。もちろん劇場同士でやり取りがあったりするんだろうけど、東京のそれとは大違いだ(彼女(東京生まれ東京育ち)に話したら「東京の人はよそに遊びに行ったらはしゃぐのよ」って言ってて笑った)。今作では東京からやってきた役者が現地の人に方言を指導してもらうという関係性からある種の勾配を導き出す。主人公の気持ちの発露こそ美しくてクリティカル、キスの場面はとても暴力的だということが重要だ。『カイロの紫のバラ』のように消えてしまう主演男性、これだけで素晴らしいと思う。並行して描かれる鉄ちゃんの子や井浦新のやり取り、「(電車のシフトを)僕は驚きたいから見ないんです」というセリフは発話も含めて素敵だった。今作、ちゃんと良いところあるんです。しかし導入されるギミックがほんと良い方に働いていない。妖怪電車、誰も乗っていない方が美しかったな。言い訳のような寒いギャグとかいらないです、ちゃんと普通のやり取りだけで面白いので。終盤もウダウダセリフ入れなくていいやろ。言葉少ないあがた森魚の素晴らしい主題歌の方が遥かに雄弁。冒頭の長回しから文句言いたくなるわ。不用意にダラダラとした長回しが多い。こういう映画に114分も必要か?切るところはしっかり切るからこそ、長いパッセージが引き立つんよ。
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