フランツ・ロゴフスキとザンドラ・ヒュラーの黄金コンビでの演技がとても良い。
薄暗い大型スーパーマーケットの店内で在庫整理をしたりフォークリフトを操ったりというシーンが主を占める映画なので絵的には地味に見えますが、実際によくみると延々と棚が並ぶ様を左右対称、または上下対称などレイアウトの均一さを意識したのかカメラアングルを工夫して撮影されており、またこの均質さは東ドイツ・社会主義時代の賃貸建築を代表する飾り気のないPlattenbauをも彷彿とさせているように見えました。
そういった点にも興味を持てる人には面白く見られる映画だと思います。展開がとてもゆっくりしているので、映画にテンポの速さを求める人には向いていないかもしれません。
ドイツ東西統一後に自分達を取り巻く社会と価値観の変化に気持ちがついてゆかない旧東独出身者の哀しみと、そのような年長者達と若者である主人公の優しいやり取り、また年上のマリオンとの儚い触れ合いが終始控えめに描写されている分、終盤で起こる出来事がそれが持つ悲しみを際立たせているように感じました。
所々に挿入される波の音が伏線となり、それがラストで爽やかに回収されるところも秀逸。