オトマイム

希望の灯りのオトマイムのレビュー・感想・評価

希望の灯り(2018年製作の映画)
4.3
蛍光灯に照らされたほの青く冷たい画面。天井まで商品が積み上げられた巨大マーケットの店内も、南の島の絵が掛けられた薄暗い休憩室も、幸せをみつけるにはすこし寂しすぎて。孤独であることのどうしようもなさがすみずみまで満ちる、それでも胸に小さな灯りが灯り、地に足をつけて歩こうと思えた。

ひとは過ぎ去って無くなってしまったものへの憧憬を募らせる。あの頃だってそう捨てたもんじゃなかったと。たとえ国の統制が厳しくとも誰もが糧を得るために働き仕事仲間と隙をみてサボり仕事が終われば一杯飲んで新しい出会いがあれば心ときめく。そんな毎日はいつまでも続くかもしれないし、そうではないかもしれない。あなたとは今日何気ない話ができたけれども明日は挨拶もできないかもしれない。ひとは元来孤独なのだから。それでもひとは繋がって生きるしかないのだから。ここにはごくあたりまえの生活の営みがあり体温がある。それに素直に心震えた。天使の姿は見えなかったけれど大好きな『ベルリン・天使の詩』を思い出した。いや、どこかに天使はいたのかな。