LalaーMukuーMerry

空母いぶきのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

空母いぶき(2019年製作の映画)
4.3
戦争映画はそれなりに見てきたつもりだが、自衛隊が出てくるものはほとんどない。自衛隊創設以来、日本は戦争をしたことがないのだから当然か。でも、このところ中国がますます高圧的になっているので尖閣諸島で、いつ不測の事態が起こってもおかしくない。その時日本は、特に自衛隊はどのように対応するのだろう? 素朴な疑問に具体的なイメージで答えてくれるこういう映画は貴重だ。
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最近読んだ「邦人奪還:自衛隊特殊部隊が動くとき」(伊藤祐靖著、新潮社)は、尖閣と北朝鮮が舞台で、臨場感がすごくてメッチャ面白くてためになった。この映画では、特殊部隊ではなく、航空母艦いぶきを中心とし、4護衛艦、1潜水艦からなる大部隊(第5護衛隊軍)の行動(それぞれの艦や戦闘機の連携した行動)が描かれる。
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背景:フィリピン近くの架空の島国(過激な民族主義の国)が急速な軍拡をしたせいで、東アジア海域の軍事的緊張が異常に高まっていたが、ある日突然、日本領土の離島が一つ占領された。
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危険地帯では、警備行動から防衛出動(戦闘を想定した出動)に一歩踏み出さざるを得ない状況になる。その時、部隊はどう行動するのか? 日本には、憲法の制約から交戦権はない。が、自衛権は当然のものとして認められている(と解釈する)。外交交渉に影響するような戦闘は極力避けること、絶対に戦争に発展させてはならない。一方で、戦わなければ守れないものがある(国民の命)。指揮官の命令一つが戦争の引き金になるかもしれない。そのプレッシャーたるや物凄いに違いない。そういう現場の厳しさを再確認できたのはよかった。指揮官の命令に即対応できるように日頃からこんな練習を積んでるのですね。自衛隊すげぇ。
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あと、自衛隊員の性格が、一人乗り戦闘機のパイロット(航空自衛隊)と船乗り(海上自衛隊)とでは、全然違うということ、「ナルホド、そうなの」という感じで面白かった。
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戦闘機どうしの戦い、潜水艦どうしの戦い、護衛艦どうしの戦い、対空ミサイル、対艦ミサイル、空対空ミサイル、魚雷・・・様々なバトルが描かれる。一度にたくさんのミサイルや魚雷の攻撃を受けても同時に全てを撃退できる装備をちゃんと備えているのですね。すげぇな。
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映画では日本の軍備が相手国より高性能で、兵士の能力も高いという状況だったが、五分五分の場合とか、多勢に無勢ということもあるのではないかと心配したりする。尖閣ではこういう空母部隊がまだまだ有効だとも思えるが、これからはサイバー攻撃や宇宙軍がメインの戦場になるという。こういう方面の装備も怠りないよう、政府ともどもよろしく頼みます。