全く情報を入れずに観たので、序盤の警官隊のシーンで違和感を感じる
あらすじを読んで鑑賞を続けるも、「語り手」の登場でまた別の違和感が現れる
こんな感じで違和感が次々と出てくるのだが、観ているうちにこれは一種の「カフカ的不条理もの」なのだなと理解した
「難民」というテーマを当事者の心情に沿って描けば、なるほどこういう「感覚」かと腑に落ちる
「巻き込まれサスペンス」の様な導入がやがて主人公のアイデンティティを巡る物語に昇華していく「ノワール味」も面白い
結構複雑なシチュエーションに依る各登場人物の持つ情報のズレ、手話を通すことで生まれる事実を知るタイミングのズレ、語りと映像のズレ等、「俯瞰」で観るのが適切であろうが、それが主人公が飲み込まれていく現実に対する視点と混ざり合い本作の独特の視点を構成している
映画序盤での主人公が作家の遺稿を読んで時のナレーション
「登場人物は頭の変な人間ばかり
邪悪で不透明な事態に巻き込まれ、それに抵抗する
その中の1人が自分に似ていることもあり
彼らが起こす面倒も不快ではない
初期の思想から当然の帰結までを追うと彼らの行動が理解できた
彼らを描いた作家はもう故人だ、ゆえに不快さも減る」
実はこれが全てではないかとも思う