この映画が映し出す政治と金と暴力と格差は反吐が出るほどだが、それでも事あるごとに観てしまうマイケル・ムーア監督の編集の見事さには脱帽だ。
どことなくネットミーム的なニヒルな笑いが最後まで飽きさせずに、深刻で重い話題へ観客を繋ぎ止めている。
お馴染みのトチ狂った突撃アポ無し訪問も実に皮肉が効いている。
ある程度アメリカの国内情勢に関して知識がないと鑑賞が辛くなってくるだろうし、当時を経験していない人なら尚更そう感じるだろうが、ムーア監督の作品に通底する普遍的なテーマは現在でも間違いなく有効だろう。
一部の人たちが得をするために、その他大勢が代償を払わされるという人類共通の「業」に対して、鋭くカメラを向けた快作。