勝沼悠

華氏911の勝沼悠のレビュー・感想・評価

華氏911(2004年製作の映画)
4.9
 ご存知ドキュメンタリーコメディ(?)の雄、ムーア監督の最新作。
 就任から9.11、イラク戦争までのブッシュ大統領の迷走と嘘をユーモアたっぷりの編集と突撃取材で描く。

 この映画で描かれているアメリカのここ数年の裏の部分は本当に救いようがない。しかし、ムーアはブッシュという道化を通して、時にユーモアを交えてそれを伝えている。
 9.11まで休暇取りまくりのブッシュ。
 テロの直後うろたえて何もできずとりあえず子供たちに絵本を読み続けるブッシュ。
 アメリカ中で飛行機が飛べない中ビンラディンの一族の出国を許可してしまうブッシュ。
 テロとの対策を国民に呼びかけた直後に、ナイスショットしてるブッシュ。
 核ってちゃんと発音できないブッシュ。
 ブッシュは本当に主演賞に値する働きを見せてくれている。
 そしてだんだんと話はブッシュだけでなく、富めるものとそうでないものとの間の話になっていく。
 今回のテーマは本当に救いようがない。 ラスト、ムーアが議員達に向かって子供の出兵を呼びかけるシーンは、前作ボーリングフォーコロンバインのラストでケーマートでの弾丸発売を止めたシーンと比べてあまりに不毛で成果がない。
 だがそれは今回のテーマが本当に厳しいものであったからだと思う。彼のドキュメンタリーの本質は目に見える成果よりもどうにもならないもどかしさを伝えることにあるのかもしれない。
勝沼悠

勝沼悠