みかんぼうや

アイネクライネナハトムジークのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

3.3
大好きな今泉力哉監督作。にして、初めてハマらなかった作品かもしれない。決して悪い作品だとは思わない。が、私が今泉監督作に惹かれ続ける、“自分の周りに実際にいそうな登場人物たちと実際にありそうなシチュエーション”、“それにリアリティを持たせる地味ながら絶妙な演出とその人物像を何とも自然に生き生きと演じる役者たちの演技”、“淡々とした会話の連続のようで、とてもディープで繊細な心理描写”という3点が、この作品ではほとんど感じられなかったのが、他作ほど惹かれなかった理由。

一言で言うと、今泉監督にしては、リアリティに欠けるというか、日常を描いた作品でありながらどこかメルヘン。それもあって、役者たちの演技も他の今泉作品より少し不自然で演技っぽさを感じてしまい、同監督作品の醍醐味でもある、“探せばその辺にいそうな人”への興味を最後までこの作品の登場人物たちに持つことができなかった。

これは伊坂幸太郎氏の原作の雰囲気もあるのだろうか?最後は今泉監督らしい“優しさや温かさ”はしっかりあるのだけれど、今まで観てきた他の今泉作品と比べると、どうしても深く入り込めない何かがあった。

ただし、物語とは別に、主演の2人はやはり魅力的。久しぶりに見た多部未華子は、広瀬すずや石原さとみなどの煌びやかさみたいなものはないけれど、その自然な可愛らしさが本当に魅力的。そして三浦春馬。作品の中で彼の満面の笑みを見る度に、作品の中身とは別で目頭が熱くなった。本当に・・・ただただ残念です。
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