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博士と狂人のlaszloのレビュー・感想・評価

博士と狂人(2018年製作の映画)
3.5
2018年
英 仏 アイルランド アイスランド 合作
監督 PBシェムラン(ファルハドサフィニア)
原作 事実を元にした小説 クロウソーンの外科医
WOWOW

オクスフォード英語辞典の誕生にまつわる逸話

貧しい家に生まれたため独学で博士号を持たない言語学者マレー教授
戦争で精神を病んだ元軍医で殺人犯のDr.マイナー
マイナーに夫を殺された未亡人のイライザ
三者三様の人生が言葉という見えない意図に導かれて絡み合う

全ての単語と語源そしてその変遷を収録した完璧な辞書の編纂責任者に抜擢されたマレー
しかし言葉の数の多さと参考文献の少なさに作業は難航
現れた協力者が精神を病んで人を殺し病院に入っていたマイナー 看守の命を助けたことから特別の待遇と治療を受けられることとなりその環境と知識を駆使して大量の資料をマレーに送る
夫を殺され多くの子供たちを抱え生活に困窮するイライザ 当初マイナーを心から憎むがマレーの手助けをするうちに心のキズが徐々に癒えて来て真摯な態度を見せるマイナーに次第に心を許すようになる
マレーとの友情そしてイライザの愛情によって立ち直るかに見えたマイナーは許されることによる自責の心から新たな病を抱えることになる
第一巻完成により博士号を取り社会的地位を確立した矢先他国からの批判に乗じてオクスフォードの反対勢力がマレーの失脚を目論む

そして辞書はどうなる?マイナーは立ち直るのか?未亡人とその家族は?
この後ウィンストンチャーチルも登場します

前半の人物像をじっくりと描き出した丁寧さとは裏腹に終盤に向かう後半の展開は急ぎ足過ぎてちょっと置いて行かれ気味でした
私もあまり長い映画は好きではないですが実話に基づく良い内容なのでじっくりとフィナーレを描き込んでも良かったのではと思います

エンドロールで2人のその後が語られます
マレー博士はナイト爵位を叙された後1915年に肺炎で亡くなりました
Dr.マイナーは帰国したアメリカで統合失調症と診断され1920年に亡くなりました
初版の12巻が出版されたのはその後の1928年です
183万の引用と41万語が掲載されたその辞書は編纂を始めてから70年後にやっと完成しました

事実を元にしていますが言葉にこだわり言葉に救われて行く人生という切り口が新鮮で楽しめました
是非ご覧になってみてください
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