よしまる

博士と狂人のよしまるのレビュー・感想・評価

博士と狂人(2018年製作の映画)
3.1
 wikiに書いてあることによると「世界最大の英語辞典「オックスフォード英語辞典」誕生に隠された真実の物語を描く」らしい。

 間違ってはいない。嘘でもない。けれどもこう書いてあると辞書を作るためにどんな苦労があってどのように世紀の辞書が生み出されたのかとワクワクするやん?!

 全然違う話だった💧

 驚くほどに緻密な調査と推敲を重ね一世一代の辞書作りに生涯を賭けんとする博士がメルギブソン。

 かつて軍医であり、精神を病み被害妄想から罪のない男性を誤って殺してしまう狂人がショーンペン。

 けれどもギブソン博士の辞書作りは狂人のそれで、ペン狂人は博士並みの叡智で辞書作りに関わってゆく。つまりは博士と狂人、プロフェッサー&マッドマンを状況設定とその言動により巧みに交差させ、どちらがどちらでもないという宙吊りのまま描くことで観るものの心を揺さぶりかける。

 これが名優ふたりの演技合戦によりじーんと沁みてくるのだ。

 が、演出としてはいかがなものか。

 狂人に殺された男性の妻がまるで不思議。
 辞書作りにちっとも役に立たない博士も不思議。
 博士の奥さんは有能すぎて理事会で一席ぶってしまうほど不思議。

 実話ベースで仕方ないのかと思いきやそうでもなくて、ペンがアレをアレしてしまうのとかも含め、ん?ってなるところはほとんどが映画の創作であるらしきことがわかり余計に残念な気持ちになった。

 辞書作りの困難さを描くわけでもなく、殺人者と被害者の関係性についてはいろいろ杜撰で、博士と狂人の友情も実はこれといって根拠に乏しく、結局何を伝えたかったのかよくわからないうえに盛り上げポイントもなくて、もっともらしい演技に誤魔化された気がした。なんか良いもん観せられた、という幻想。

 演技だけでは脚本や演出を補えるものではないのだな、という気づきの映画だった。そっちだけ愉しむ分には充分だけれど、ボクはそこのクラスターには居ない。