TaichiShiraishi

ライトハウスのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

ライトハウス(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

なかなか日本公開がされずに、ようやく見られた本作だったが、その上がりきったハードルを余裕で超える怪作、傑作だった。



ほぼ四角形のサイレント映画のような圧迫感を感じるフレームと、陰影の濃いモノクロ映像の中で繰り広げられる、現代の技術がなければ無理な特殊効果とメイキャップ、カメラワークの映像絵巻という倒錯感、狂っていく2人のハイテンションな熱演、ラブクラフト作品のような海に囲まれた島という設定を活かした恐ろしいビジュアルイメージ、そして見ている側の間隔まで狂わせるような数々の演出、とA24っぽさ前回のテイストで好きな人間にはたまらない。



限定空間で2人だけという状況での惨劇自体はスリラーなどでもよくあるが、『ライトハウス』はそんな嫌な状況で起きるブラックな笑いを前面に押し出している点が斬新で素晴らしい。



名優2人が役作りも徹底して作り上げたキャラクターの、実在感もありつつも次に何をするのか予測のつかない怖さを持った主人公たちのキャラ造形、孤島という状況をさらに嫌にさせるような汚しの美術、そして途中から出てくる○○のビジュアルイメージの禍々しさ、などなどいずれもホラーでありながらもあんまりにもエクストリーム過ぎて、ちょっと笑えてしまうような塩梅になっている。



特に追い込まれた2人の酒盛りの場面や、料理の腕を指摘されたデフォー演じるウェイクの超大仰なブチギレシーン、いきなり出てくるざっくりした『シャイニング』オマージュ、そして訪れる顛末…どれも陰惨ながらどこかユーモラスで、はまる人はとことんはまってしまう独自のテイスト。



実際の事件のネタや、船乗りの間で有名な説話、数々の神話、そして主人公を信用できなくなるようなニューロティックホラー要素など、考え出すと難解ではあるが、テンポもよくポンポンとショッキングなシーンが続くから飽きないし、閉鎖空間で悶々としながらも最終的に吹っ切れて後先考えずに暴れまわるような展開になっていくので、自粛期間で仕事の変化や遊びの選択肢の少なさにもやもやしている人(私だが)がみれば、不思議とスカッとしてしまう。



いろんな考察の余地はあるが、まずは「ホラーテイストのクソ上司に復讐するブラックコメディ」だと思って見てほしい。
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