シネフィル母ちゃん

イタリアの父のシネフィル母ちゃんのレビュー・感想・評価

イタリアの父(2017年製作の映画)
3.0
外れ続きだったイタリア映画祭。
トリを飾る「イタリアの父」が、自分にとっては唯一外れではなかった作品だった。
(だからといって好きではなかったんだけれども)
.
恋人と別れ、失意のどん底にいたゲイ青年が、ピンク頭の妊婦メンヘラちゃんと出会い、彼女と父親探しの旅するお話。
この妊婦がとんでもないDQNで、何も共感せず。
子供を授かろうが他人事のプッツン系メンヘラで、なぜ主人公が彼女に惹かれたのかわからない。
日本公開はなさそうだから、ネタバレでレビュー。

彼女は、宝くじに当たるくらいの強運で、主人公と出会う。
そりゃ失意のどん底にいなければこんな女に付き合うはずがない。
でも、自分の目的を果たす旅の相棒を手にした彼女は彼を振り回す。
母親になる自覚持とうよ…って思うけれど、結局彼女は子供を産んでも失踪してしまう。
何も変わらなかった。
一応、途中で彼女がこうなる理由として実家や家族が登場するけれど、「なるほどね、それなら仕方ないか…」なんてならない。
むしろ、彼女の母親の気持ちもわかる。
結局、彼女は子供よりも自分が1番の悲劇のヒロインタイプだ。
ただ、それがリアルだった。
母親になる人みんなが母性に目覚めるわけじゃない。子供よりも自分の人生を生きたい。
だからこういう女は世界中にいるんだろう。

じゃあどうしてこの作品が嫌いじゃないのかって言うと、ラストシーンに心が響いたから。
「ゲイは子供を持てない」と思い込んでいた主人公(実際はゲイでも養子を持つことが出来る国もあるが)
だけれど、女が失踪するまえに主人公のことを子供の父親と嘘をついたことにより、彼は父親になれた。
産まれたばかりの赤子を泣きながら見つめる彼の表情が凄く凄く良かった。
そして、「イタリアの父」というタイトルの理由もここで発覚する。
彼女との旅の中で「生まれてくるのが女の子だったら名前はイタリアにする」という会話があったんだけれど、実際に生まれたのは女の子だった。
主人公はこの子に"イタリア"と名付けて父親として生きていくのだろう。