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シシリアン・ゴースト・ストーリーのMTMYのレビュー・感想・評価

3.6
実際の事件をもとに作られたフィクションという本作。
ポスターのキラキラフワフワした感じからは想像できないような重い話で驚きました。

やっと想いの通じ合ったかと思われた少年少女が、大人たちの無残な都合で残酷な運命を歩むという筋書きに、少女のイマジネーションが無垢にも紡ぎ出されて(ダーク)ファンタジーと化していた。

どこからどこまでが少女の想像で、どこからどこまでが事実なのか…
そこが際どいのが本作ですが、
みんなにそう思わせる要因はズバリ、少女の想像の世界と少年の監禁される現場のシンクロにあります。
少女は夢を見がちな子なだけで、予知できたり千里眼があるわけではありません。

なのになぜ夢と現実の映像にシンクロが起きるのか…

※以下内容触れます

そう考えると、作品を見る限り、映像のほとんどが少女のイマジネーションだと思えます。

少女はすぐに想像の世界に飛び込めますが、同時進行して流れる監禁現場や状況を知っているわけではありません。

私が思うに、
映画は少女の想像と少年の監禁が同時に流れて進んでいくわけですが、
時系列的に整理すると、まず現実に起こっているらしい少年とマフィアだけが出てくるシーンは抜かし、明らかな空想シーンを含め少女が実際に映像に現れるシーン全てがまず先に来ます。

そして、少年とマフィアたちのシーンですが、これは事件後に事件の内容を知った少女が 自分の見た空想に着色したことで”憶測でファンタジー化した現実”ともみられないでしょうか…。(ややこしいですが)

つまり、この作品で少女のイマジネーションとシンクロしてると思われた少年失踪後の 少年が監禁されるシーンも、全てを知った後の少女の想像だと思う…っていうことです。
だから現場のシンクロが起きるのです。


そしてもう1つ個人的にきになる時系列。
①少女が空想で少年の監禁場を知り、少年のゴーストと思われるものと逃亡し、抱き合いますが、彼に「君はきちゃだめだ、生きろ」みたいなことを言われるシーン。

それと、
②寝る間際に(多分「私もうダメだ死ぬ」みたいなメッセージの)モーリス信号を受け取った親友が少女の元に駆けつけて(自殺未遂の?)死にそうな少女を見つけるシーン。側には(「彼女なら大丈夫」と言うかのような)少年のゴースト。

映画では①②で進行しますが、私的に厳密には②①(もしくは②の途中から①が進行)だったのではと思えました。

(現に、親友がベッドに全く同じように横たわるシーンが①の前に一度流れたかと思います)

つまり、彼なしでは辛くなった少女が大人にも理解されず、最後のメッセージを親友に送った後自殺をはかり、意識が遠のく途中で見た夢が、少年の在り方を発見して2人で逃亡するというもの。少女は少年と永遠に一緒(共に死ぬ運命)を望みますが、少年のゴーストは彼女に生きるよう説得し、親友の女の子に託すのです。

ラスト、彼女が友人たちと元気にいられているのは、
そのイマジネーションによってつらい現実を乗り越えられた少女の強さでもあるのでしょう…

追記
酸で溶かされ海に捨てられ、それが生活用水として循環していると示唆する描写はある意味ホラーでした。
少年と少女が水を通じて繋がっている と言うと聞こえは良いですが、現実的にはわりと怖いです。。
序盤、地下へ染み出した水が少年の飲み水へとつながり、
結果その少年が溶かされた水が生活用水路?みたいな所へ流れて行き、少女の頬へつたる水へ…となるわけですが、
いやいやふつうにそんな事態驚きすぎて恋物語どころじゃない、、笑

あとは、やっぱり 水 っていうのは現実と非現実の境目を表すのに良いですよね、、
水面にうつる自分、あのゆらゆらした感じ、触れられそうで触れられない感じ、アメーバのような変形自在な感じ、神聖で幻想的な感じ。

シシリアは私ぜんぜん知らないですが、
これをきっかけに少し興味が持てました…

そしてここから余談モードはいるんですが、、、

この作品は空想癖のある少女が出てきますが、残酷な事件の犠牲者となった少年に作品を捧げている という点から考えると、
少年に対する鎮魂歌的なメッセージがあると捉えられます。
そうすると、単なる2人の恋愛モノというより、
絶望的な運命を背負わされた少年への
「誰にも見つけられず絶望の淵にいる君を、たとえ空想だろうが探し出そうとしてくれる存在がいたんだよ」というメッセージ作品とも考えられます。
つまり、少年に「ぼくには今でもきっとぼくを探しつづけてくれる存在がいるはず…」という希望を持たせてあげた作品ということです。
ということは、想像を働かせていた人物は、実は少女ではなく、少年の方だと考えられるのでは、というわけなんです。


いろんな見方ができて、後々になってからじわじわと面白いです。

それにしてもポスターきらきらファンタジーすぎではないかい…

★ちなみに以下すっごい余談を言います。作品が好きな方は読まなくて良いです。

この作品、最後に犠牲になった少年本人に捧げる と出てきますし、内容も内容なのでわりと真剣なものですが…
私的にもっと違う見方ができたら面白いのかも??と思ってしまいまして…

もしこの話がシシリアの内情とか事実に基づいたものでなく、全くの根っからのエンターテインメントとして観るとこが許されるのなら、

「親にあの少年とは付き合うなと断固反対された空想癖の少女が、ある日理由もなく欠席し出した彼に対して 事実を知りたい一心から ありもしない壮大な誘拐物語を紡ぎだし、大人からも認められない切実で一途な恋心を抱える悲劇のヒロインを演じ切ってしまった究極の恋愛妄想オチ(」

とかだったらどうしようとかつい思っちゃいました、すいません!(深くは考えてないです)
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