ジェイコブ

ザ・プレイス 運命の交差点のジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

街角に佇むカフェ「The Place」。窓際にいつも座る男のもとには様々な事情を抱えた人々が訪れる。男は人々の願いを叶える代わりに、誘拐、暴行、爆発物の密造、強盗と、ありとあらゆるな悪徳を指示して行わせる。様々な人々の運命が交差するとき、彼らに待ち受ける結末とは……。
全世界で話題を呼び、ハリウッドや韓国、日本でもリメイクされた「おとなの事情」のパオロ・ジェノベーゼ監督の最新作。人々の自由意志と選択の可能性をテーマに、希望に満ちた言葉に踊らされた人々が辿る危うい人生と浅はかさを描いている。
男は誰なのか、何の目的があって人々に試練を与えるのか、最後まで明らかとなっていない。ただ、ラストで人間の嫌な部分を見続け、疲れ果てた男が、この役目を終えたいと言った時、意外な人物が男に「提案」をする。その事から、彼の役割がフランス映画のホーリー・モーターズのように持ち回りであることだけはわかる。男は人々に「人には信じる以上の力がある」と囁き、人々に無理難題を指示する。重要なのは、彼はあくまでも「提案」しているだけであり、実行に移すかどうかは人々次第であるということだ。人が願いを叶えるためには相応の対価を払わねばならないというテーマは、様々な作品でも描かれているが、本作の肝はその願いが他の人の行動によって叶えられているということだ。そこから、裏テーマとしてバタフライ効果があることが読み取れる。
人は自分の望みを叶えるために、どんな犠牲でも払うのか? また仮に叶えたとしても、彼らに待つのは果たして本当の幸せなのか? 物事はなるようにしかならないものであり、運命を無理矢理捻じ曲げようとしても、結局はどこかでツケを払うことになる。
あまりスッキリするような内容のドラマではないが、自由意思や運命について考えさせられる良作である。