海

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私への海のレビュー・感想・評価

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痛くて恥ずかしいけどそれよりずっと愛しさを感じたのは、わたしがもうケイラを通り過ぎた「大人」だから、なんだろうか。14歳の頃、現実よりもネット上の友達の方が多かった。詩や絵を見せ合う場として使っていたSNSの居心地は最高だったけれど長くは続かず、高校に上がるとついにSNSはスクールカーストに食い込み、浮き彫りにした。自分がずっと表現の場として使っていたTwitterとかInstagramを、現実の友達がお互いの日常をチェックするために使い出したのは本当地獄だった。今の子たちは、その頃よりももっとSNSに時間を割かざるを得ないような状況にあって、もしかすると「居心地の良いSNS」なんて知らない子も沢山居るのかもしれない。自分の価値は他人からの評価に依存しきり、きらきらしてる青い春は自分の背じゃ届かないように感じる。ケイラが、もしいつか自分に子供ができたらと話すシーンで少し涙が出そうになった。危うくてダサくて、それでも可愛くて仕方ないケイラの、4年後でも10年後でもそのときの姿を見てみたいと思って、自分の過去と未来のことも、同時に考えた。彼女のことをすごく近くに感じた。「いいね100個もらったってみんな世界一になれないけれど、いいねが0個でもわたしたちは世界一になれるね」と、ある朝突然ケイラに、友達みたいに話しかけてみたい、見栄を張ってかっこつけて両手の親指を立てながら。理想に近づくために嘘もついて演技もしてそうやって必死になって生きてる女の子がわたしは本当に心から大好きで、尊敬する、愛している。痛くて恥ずかしいけどそれよりずっと愛しさを感じたのは、わたしがもうケイラを通り過ぎた「大人」だからじゃなくて、ケイラと同じ危うくてダサくってそれでも可愛くて仕方ない女の子だったことがあるからかもしれないと、そう思った。
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