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向こうの家のQTakaのレビュー・感想・評価

向こうの家(2018年製作の映画)
4.3
坂上の和洋折衷の不思議な家
そこに住まう女性。
それだけで既に魅力的だった。
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本当のこの物語は、高校生の少年の一夏の成長物語なんだが…
学校生活の中の少年と友達、彼女。
高校生の学校生活を追う物語と思いきや…
所属する釣り部は、部室を追い出され廃部。
そして夏休み。
さらに、登校拒否。
学校行かないし、友達も彼女もあんまし出てこないし。
(でも、物語のストーリー的に彼らは重要で、きちんと存在する。)
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家族の中の家族と少年。
ちょっと妙な雰囲気の家庭。
家族にケンカは無い。
ぶつかることも無い。
よく話し、わかりあう…
秘密も無い?
(かなり居心地悪いな…)
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そこに降って沸いたお父さんの浮気。
少年が向かった坂上の家で出会った女性は…
ここから私の意識は完全に”瞳子”さんに釘付けでした。
坂上の和洋折衷の不思議な家とその住人。
家の雰囲気に何か古さと垢抜けたモダンさとを感じ。
瞳子さんのファッションも髪形も、そして話し方も昭和の雰囲気で…
そこから色々考えてしまう。
時代は、この物語の日付は、おそらくバブル景気後まもなくの平成10年頃。
部屋いっぱいの貢ぎ物は、バブルの名残か。
昭和の雰囲気を感じるのも、瞳子さんの青春の名残か。
瞳子さんの自由な雰囲気も、誰もが自由に生きられた好景気の名残か。
あのしなやかな会話の魅力は、一体なんだろう?
萩くんを迎えるそのおおらかな、包容力の源泉はどこにあるのだろう。
芳郎の息子”萩”を迎え入れた時に、芳郎との関係の終わりを予想していたのに。
その余裕とも感じられる姿はなぜだろう。
確かに、萩くんは、彼女にとって子供だからね。
男(芳郎)の子どもを、あやすように相手するのもお手の物かもしれない。
それにしても、萩と瞳子さんの関係は、それだけなのかな?
芳郎にとっても、瞳子さんにとっても、互いの関係の間に、柔らかな緩衝材として萩くんが居たのかな。
瞳子さんにもし子供があれば、それは萩くんくらいのはずだね。そんなことも、関係しているのかな。
それにしても、瞳子さんの居る坂上の家(向こうの家)は、魅力的だった。
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その家と、瞳子さんが印象的な映画だった。
そして、こう思う。

”向こうの家”に行きたい
「ただいま〜」って、瞳子さんに言ってみたい。

っと、妄想たっぷりに心酔させてくれる物語だった。
イイ映画です。
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映画観賞後、西川監督とお話した。
映画監督って、どうやってなるのかなと思っていたけど、西川監督は東京芸大の大学院生。
本作品は、卒業製作、卒研みたいなものだったらしい。
大学院では、黒沢清監督に指導を受けているし、同大学の出身には、濱口竜介監督や真利子哲也監督などもおられる。
そんな環境で学び、人間関係を持つことができるのも、大学での学びの一部だろう。
昨今、様々な経歴から監督になる人がいるけども、こうして学びの場を通して、実力も、人間関係も付けて、監督になる人も居るんだなぁと思いました。
西川監督の次回作、楽しみですね。
いや、その前に、もう一度”瞳子さん”に会いたい。
何とか見られないものか。
全国のシネコンでロードショー上映を希望する。
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大谷麻衣さんのインスタライブで、質問してみました。
質問:瞳子さんって昭和の雰囲気でしたが、大谷さんと時代が違いますがどうでしたか?
回答:
もともと”瞳子さん”にも映画にも”昭和”という設定はありませんでした。
監督も麻衣さんも”昭和”の設定は無かったけど、映画を見た観客の感想からそういう雰囲気を感じるという声が多く出てきたと言うこと。
映画の面白いところですね。
製作者の意図とは別に映画が歩き出してしまう事って有るんですね。
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これはとても興味深いお話でした。
この映画に、時代設定はどこにも提示されていませんでしたね。
でも、あの建物や、瞳子さんのファッションに私たちが何かを感じ取ったのかもしれませんね。
それらも、監督と麻衣さんの魔法の産物だと思うんですけどね。
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