ヨッシー

九月の恋と出会うまでのヨッシーのレビュー・感想・評価

九月の恋と出会うまで(2019年製作の映画)
2.2
『SF要素と恋愛要素のパラドックス』

松尾由美の同名小説を映画化。

突如自分の部屋から聞こえた未来からの謎の声に従った事で、死の運命を回避した北川詩織はその事でタイムパラドックスを解決するため、謎の声の主を探すことになる。

監督は『わたしにx xしなさい』などの山本透。
主演は高橋一生と川口春奈。

またまた“死の運命”が障害となるタイプの恋愛映画。つい先月『雪の華』と『フォルトゥナの瞳』をやったばっかりなのに、似たような作品がこうも立て続けに公開されるのはどうなのかな?

まあそれは置いといて、今回はみんな大好きタイムリープがあるSF作品でも作品でもある。
このタイムリープ要素はあんまりないタイプの作品で、タイムリープを使って過去を変える作品は山ほどあるけど、本作は過去を変えてしまったで起きたタイムパラドックスを解決するという珍しいタイプ。

タイムリープものってどうしてもどこかしらでタイムパラドックスが起きてしまう作品が多く、そういった矛盾を解決しようというのは面白い。
序盤の謎を振る展開はテンポよく進むし、タイムパラドックスに関して高橋一生演じる平野が川口春奈演じる北川詩織に説明する件もなかなか楽しめた。
なので、序盤の30分程度はかなり期待しながら見れた...最初に方は。

しかし、残念ながら中盤以降はかなり残念な出来になっている。

中盤以降はタイムパラドックスを解決するため、謎の声の主(シラノ)を探す話になるのだが、ここから北川と平野の恋愛話にシフトしてしまって、本筋の話が完全にお飾りになって全く進まなくなってしまう。

例えば、シラノの候補の1人である北川の元カレの居場所を探すために母校の大学に行くシーンがあるが、2人が大学でイチャイチャしてるシーンばかりで、肝心の元カレの居場所は結局一切わからないまま終わってしまう。しかも、この大学に行ったことがのちのストーリーに一切影響はない。なんの為のシーンなの?

もちろんこれは恋愛映画だし、2人の仲を深めるシーンは必要だけど、そのためにメインのストーリーを完全に止めてしまっては意味がない。
そもそも、この2人の恋愛の障害がタイムパラドックスによる北川の消滅ではなくて、単に平野の心の弱さなのではタイムパラドックスの設定が生きないよ。

結局中盤からクライマックスまでは2人の恋愛話ばかりで超退屈だし、終盤になれば尺が足りなくなったのか話に畳み方がかなり強引。しかも、予想通りの展開にしかならないから全然面白くない。

細かいところでもツッコミどころが多すぎる。
シラノの正体は自分で未来の平野であると言ってるのに、北川も現在の平野もやたらとそれを否定するけど、その根拠が全くないから2人の考えには疑問しかない。

それに肝心のタイムパラドックスによる北川の消滅に関しても、それはあくまで平野の憶測でしかなく、本当にそれが起きるという根拠は全くない。
例えば、最初はあくまで仮説でしかないと2人とも気にしてなかったが、北川の身の回りで彼女の消滅を暗示する奇妙な現象(周りの人々から忘れられるとか自分の記録が消えるとか)が起きた事で本当に彼女が消滅してしまうかもしれないという危機感を持ち出すとかならまだ納得できる。
でも、最初から彼女が消滅してしまうのが確定事項のように行動するのはかなり不自然。

あと、シラノが2週間も平野を尾行させてた理由って結局なんだったの?シラノの目的は運命に日に北川を外出させて殺されるのを阻止する事だからそんなことする意味がない。もっと言えば尾行とか回りくどい理由付けないで最初から真相を全て明かしておいた方が確実でしょ。

そもそも北川の部屋が未来と繋がってしまうという現象に関する理屈が一切ないのもどうかと思う。
単に奇跡が起きたなんて理由では何にも面白くない。
それに、この部屋の繋がるシーンは起きている現象のありえなさに比べ絵面がかなりチープ。もうちょっとありえないことが起きている感じを演出できる出せなかったものか。

それと、2人が住んでるアパートが芸術好きが集まるアパートという設定が全く生かせれていないし、他の住人のと交流が大して描かれてないのに、北川が「あの家が好き」とか言われても何も感じない。

全体的にSF要素と恋愛要素のバランスが悪く、細かい設定や演出が杜撰でせっかく面白かった序盤を完全に台無しにしてしまった印象。
最初の方は地味に期待値を上げられた分ガッカリな作品だった。
ヨッシー

ヨッシー