むらむら

八つのむらむらのレビュー・感想・評価

八つ(2016年製作の映画)
5.0
広場恐怖症と強迫性障害にセットでかかっている女性が、朝起きて外出するまでをワンカットで追う作品。

タイトルは、同じ動作を「8回」繰り返すから。
広い意味で、俺の好きな「ループ映画」なのかも……と期待して鑑賞。全然違ったけど。

開始から1時間くらいはセリフ無し。ずーっと、なんとか主人公が家から出ようとする描写の連続。細かい動作を8回繰り返し、何度もシーツを変え、服を脱いで、シャワーを浴びる。おかげで体中はカサカサに。部屋中の壁は、自分の行動に関するポストイットでベタベタに。

いやー、「弱虫ペダル」とか「魁!男塾」みたいに、同じ展開が繰り返されるマンガっていっぱいあるけど、それはそれで楽しめるじゃないですか。でも、この作品の繰り返しは、そんなのとは違って、純粋に、観てて辛い。おそらく、観てて辛くするのも、製作者の意図なんだろうけど、俺はまんまとハマってしまい、観ていてシンドくなってしまった。

おかげで主人公と同じように「家から外に出るのが怖い」状態になり(まぁ、元々ニートですけど)、8日間、Filmarksにアクセスできなかったほど。

ロールプレイのような作品なので、これ以上、感想は特になし。病気の辛さを実感したい方(いるのか?)は必見かなと。

せっかくなので、広場恐怖症と強迫性障害について調べてみた。

【広場恐怖症】

外に出るとか、多くの人の視線に晒されることに恐怖を覚える症状。
ファンやマスコミに追い回される映画スターは、そのストレスから発症してしまうらしい。

以下、映画スターや著名人の例。

キム・ベイシンガー
→酷いときは六ヶ月間、自宅に引きこもっていた。

マコーレ・カルキン
→子役で大スターになり、マスコミに追い回されて発症。

ハワード・ヒューズ
→映画製作者。4ヶ月間、映写室で過ごす。スタッフは、本人が話しかけるまで彼に話しかけることも、見ることさえ許されなかった。

ブライアン・ウィルソン
→ミュージシャン。約20年間引きこもり。鬱と幻聴も併発。そのわりに、ビーチボーイズ三兄弟では一番、長生きしてる。人生って不思議。

【強迫性障害】

同じ動作を繰り返したり、家の電気を消し忘れてなかったかが異常に気になったりする症状。

ダニエル・ラドクリフ
→電気を消すのに5分間の儀式が必要。ちなみに「ハリー・ポッター」J.K.ローリングも強迫性障害だった。

シャーリーズ・セロン
→タンスが整頓されてないのが許せないらしく、他人のタンスでさえ整頓してしまうらしい。いい人じゃん!

キャメロン・ディアス
→極度の潔癖症で、ドアノブに触れられない、何度も手を洗う、といった姿を目撃されている。

デビッド・ベッカム
→サッカー選手。ホテルに行ったら、全部のモノを棚に入れる。両開きの冷蔵庫の中身を左右対称にする。例えば、一方にコーラが3本、一方に2本入ってると、一本捨てるらしい。だったら両開きじゃない冷蔵庫にすれば良いのに……。

フランク・シナトラ
→歌手。一日10回はシャワーを浴びていたとのこと。さすがマイ・ウェイだね!

ハワード・ヒューズ
→上記「広場恐怖症」も発症しており、この「八つ」の主人公の境遇に近い。

レオナルド・ディカプリオ
→地面の裂け目を全部踏んで歩かないと気がすまない。俺も横断歩道の白いところしか歩かない時があるので、気持ちはわかる。

ちなみに、ディカプリオは「アビエイター」でハワード・ヒューズを演じたとき、同じ症状を持つ、自分の経験が役に立ったと語っている。転んでもタダでは起きないというか、役者って凄い!

以下、蛇足に近い、字幕の話。

アマプラ独占マイナー映画にありがちな「アマプラの字幕がウンコ」問題。

インディーゲームにも劣るアマプラ字幕のヒドさに関しては、これまで何度も指摘(詳しくは「Ink」「隔離」などの感想に書きました。なお「隔離」でも、「広場恐怖症」がメインモチーフになっています)してきた。

さすがに、冒頭1時間、一言もセリフがないだけあって、この「八つ」では大丈夫だろう、って高をくくっていた。

そしたら、終盤、残り5分というクライマックスで見事に誤字発見。
まさかこのタイミングで誤字をブチ込んでくるなんて……さすがアマゾン、期待を裏切らないぜ。

アマプラ誤字幕マニアの一部の人以外には関係ない話だが、これが「誤翻訳」ではなく「誤字」だったので、アマプラ翻訳は、AIではなく人間がやっていることが確信できた! これは発見!

人間がやってるんだったら、アマゾンは、字幕担当を、この主人公にお願いしたほうがいい。少なくとも、8回は校正してくれるから、こういった誤字は確実に減ると思う。

というわけで「八つ」の感想でした。

前回、「黒“四”角」という作品で、今回は「八」、次は「十六」の付く作品を観てみようと思います。
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