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21世紀の女の子のarchのレビュー・感想・評価

21世紀の女の子(2018年製作の映画)
4.1
“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていることというテーマで14人の実写映画監督+1人のアニメーション監督のオムニバス。
各作品の評価は下に示すが、「写真」や「撮影」がモチーフの作品多すぎるだろという文句は言いたい。後半の作品不利だろ!
ただ順番を考慮せずとも、そのモチーフの使い方で監督の技量の差が如実に出ていて興味深い。
山戸結希や山中瑶子は相変わらずの作風で安心したし、結局のその強烈な個性こそが映画の面白さなんだと実感した。
エンドロール含めて15本、面白い作品の方が多く満足度は高い。ただ後半に異性愛の作品かつしょうもないのが固まっていた感じがして、おれならこの作品は前の方にするな…なんて思ったりしてみていた。
「離れ離れの花たちへ」と「回転てん子とどりーむ母ちゃん」が好き。

「muse」 カメラあり
『よだかの片想い』の監督
女性の死を耽美に消費しようとする社会への怒り。 彼の小説のミューズとして消費されていたことと死に何かを紐づけてしまうことすらもこの映画は否定し、死は死でしかないとする。一方で、石橋静河にとって「ミューズ」だったことは事実なわけで、そこに入り乱れる感情を封じ込めるようなバッサリとしたラストが味わい深い。

「mirror」カメラあり

鏡面と写真のモチーフとして類似点を上手く使っていて、映画が上手い。特にラスト、鏡を使って撮っただろう2人の昔のセルフィが現在と過去をあわせ鏡にするような舞台装置として配置され、そこで彼女は「いい写真」のために、無許可で感情を弄ぶように写真を撮る。現在と過去の対比として、場所に意味付けをして、撮影という行為の反復させ、際立たせる手法が見事。

「out of fashion」カメラあり

モトーラ世理奈力で最後まで言った作品。題材が被服ということもあって、衣装系の力の入れ具合が素晴らしい。憧れや友情に依存しきってた彼女の小さな一歩を艶やかなモンタージュで表現していたが、まぁ中身は無いに等しい。

「回転てん子とどりーむ母ちゃん」
『あみこ』の監督
山中 瑶子の独善的でパワフルなガールズ心象風景が本当に好き。「あみこ」でも感じたゴダール的なジャンプカット感覚とポエティックで「主張」である台詞の転がっていく様が超快感。
少女な夢オチにしては、些かどぎついガールズトークも爆笑してしまったし、一生この様子を見ていたい気分だった。

「恋愛乾燥剤」
『少女邂逅』の監督
いちばん分からない作品。恋愛感情を水分と乾燥で表現していて、恋愛とは?で悩んでいる女の子の心理を描いてる作品で、序盤の水滴音やカットバックされるピンクの液体で、その状態は分かるが、なんで彼氏を冷めさせたいのかがわかんない。自分が、自分の気持ちと相手の恋愛感情ってそこに因果関係をあんま感じないからなのかなぁ

「projection」カメラあり
『ぬいぐるみ…』の監督
映画を撮りたいって話はどこにいったんだよ… この
オムニバス、写真をモチーフにした作品が多すぎるがここでついにそのモチーフとしての機能がなく、ただのスライドショーになった感じがする。
赤ちゃんの視線に怯んでしまうのはいい着眼点だけど、あんまり話に関与はしてなくて、それ以上にはなってない。

「I wanna be your cat」
『ひらいて』の監督
この短編群の中だとこれがいちばん個人的には知らない役者同士の会話劇になっている。このシリーズ、やっぱりある程度有名な役者を使っているがゆえのイヤらしさはあると思うのだが、本作はその辺はいちばん好感をもって楽しめた。
中盤の劇の会話は良い。それ以外はなんだかいきなりカットの繋ぎがずさんだったり、抽象的な言葉で誤魔化したりで失速している

「珊瑚樹」
全く面白くない 三角関係の描き方も中途半端

「愛はどこにも消えない」カメラあり
『明け方の若者たち』
このタイトルの短編を橋本愛にやらせているところからもう最高。失恋がテーマの作品で、すごく一方的ながらも他者は他社でしかないという諦観を以て、受容する姿を描いていていい。橋本愛の独白力がすごく伝わる作品。
本作にもカメラが出てくる…何故なんだ

「君のシーツ」
山中瑶子の新作でも同じく三浦透子が揺らぐ作品になっているが、正直本作は語らずの作風がそのままの弱々しさになっていて、微妙。

「セフレとセックスレス」
ラブホものとして面白い。尺がちょっと短すぎるし、セックスレスの原因に意外性が全くない故に、話が凪。
ただ両者のビジュアルややり取りによる空間作りは上手くいっていて好きな作品ではあった。

「rebon」カメラあり
好きな相手に"自分の半分"を見る。そういう自己愛が混在した恋愛観の物語…なのか?正直台詞が抽象的で単純な異性愛の話過ぎて映画として吸収することがなかった。あとめっちゃ『軽蔑』オマージュ。

「粘膜」
日南響子さんの圧倒的な存在感で成り立っている作品。このオムニバスで最も直接的なエロを描き、タバコを上手く撮っている作品。
セックスもは粘膜を通して、他者と交流することで、いちばん弱い部分を明け渡す行為の退廃的魅力を描いているようで、それを女性の視点で女性主導の行為として描いてるのがいい。
「離れ離れの花々へ」
『ホットギミックガールミーツボーイ』
山戸結希監督の非映画的ルーツに基づく圧倒的映像センスに持っていかれた。CM的あるいはMV的な映像表現によって、独特だけどストレートなエモーションを演出していて素晴らしい。女の子は産まれる前から女の子であり、女の子が女の子を産むのだと。このオムニバスの中でも最も「二十一世紀の女の子たち」という題における「女の子」とは?踏み込んだ作品として、しっかり未來を憂いている。こんな時代に子供を産んでいいのか、痛みと共に生まれるのが私たちだという、出産などの女性の苦悩を詩的に指摘し、母娘の連帯の物語にしている。
これは引きで撮ると結構馬鹿馬鹿しい作品になってしまうのだろうが、だからこそ超アップで撮り続ける。そうすればどんな馬鹿馬鹿しい映像もちゃんと一つの空想世界として成立するんだと気づいた。分かってやってる。
見直してしまった。
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