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蜷川幸雄シアター2「身毒丸 ファイナル」のmimicotのレビュー・感想・評価

4.2
おどろおどろしい寺山修司ワールドを万華鏡に詰め込んで、穴を覗いて回転させると、夢幻的な蜷川幸雄の世界が見えてきました。そんな作品だった。

一度観てみたかった、藤原竜也が出演する蜷川幸雄演出の舞台。

物語は、継母・撫子と義理の息子・身毒丸(しんとくまる)の禁断の愛憎劇です。

撫子を演じる白石加代子の圧倒的な存在感!時に鬼になり、女になり、母なのに少女を覗かせ、妖艶なのに清純さをチラつかせる。頭の天辺から足の爪先まで意識が通った鬼気迫る演技は、本当に美しく巧みだった。

そして身毒丸を演じる藤原竜也の震えるような全身の演技、表情の一つ一つに見入っしまう。ベテラン俳優と若い彼が同じ線上にいること自体が天才だと思う。

お母さんというのは家の光
我が家という入れ物を支度して
母を売る店で撫子を買い
擬似家族をつくる父
義母を拒絶し
亡き母に異常に執着する身毒丸
しかし心と身体は..
女として目覚めてゆく撫子...

流れる歌まで台詞のようで、目に見えない役者がそこにも。

狐のお面を被った花嫁衣装の女
生きてる誰かのお面を売る、
大きな顔のお面売り
この世ならざる世界に彷徨う人々に、シュールで夢幻的な和の世界へ連れて行かれる。
 
まなざしの
おちゆく彼方ひらひらと
蝶になりゆく🦋
母のまぼろし
てのひらに
百遍母の名を書かば
生くる卒塔婆の
手とならむかな
(劇中台詞より)

寺山修司が主催した『実験演劇室 天井桟敷』の舞台劇『身毒丸』を
共同脚本の岸田理生が改訂し、蜷川幸雄が演出した作品。
天井桟敷の作品も観てみたい。
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