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チワワちゃんのnatsumimaruのレビュー・感想・評価

チワワちゃん(2018年製作の映画)
4.1
原作未読で観賞。始まりの逃走シーンから心を鷲掴みにされた。

映像は色彩鮮やか、音楽は今どきなダンスミュージック(Have a Nice Day!やThe 1975のメンバーがプロデュースを手掛けたこともあるPale Wavesを起用)、クラブでの夜遊び、モデルの仕事、男女入り混じった仲良しグループでの交際――。俳優陣も門脇麦、成田凌、玉城ティナ、村村上虹郎、加えて新人の吉田志織と若手揃い。

*****

一見すると華やかだけど、どんどん彼女たちの本質が“垣間見えて”いくのが面白い。曝け出すというほどではなく“垣間見える”程度なのがリアリティがあってよかった。

【嫉妬と孤独】
チワワちゃんに好きな男を取られたミキ(門脇麦)。自分は趣味で終わってしまったモデルの仕事でも、チワワちゃんは成功して人気者になる。そしてチワワちゃんは死んだ。振り返ると、チワワちゃんの方が可愛くていい子だったし好きな男を取られてもモデルとして成功しても納得できる――。

そう思えたのは、実はチワワちゃんがちゃんとした住む場所もお金もなく、男関係も上手く行っていなかったと仲間に聞いて知ったから。

チワワちゃんは実際、いつも眩しい笑顔で明るくて、純粋にカワイイ。でもそんな姿が眩しすぎてときどき仲間はついていけない…そんな“歪み”に実は気づいていたチワワちゃん、サカタ(浅野忠信)の言葉で“孤独”が爆発する。

チワワちゃんへの嫉妬はミキだけじゃなくて仲間も同様。周りが嫉妬すればするほど、チワワちゃんは孤独になる。輝き、美貌、成功、プラスに見えるものほど孤独を運んでくる。「女の子は疲れる。男の子はラクだけど消耗する」疲弊したチワワちゃんが発する台詞に胸がチクチク痛んだ。

【青春の終わり】
またチワワちゃんは、「私たちって、これからもずっと会い続けるんだろうなって思った時が、きっともう会わなくなるサインなんだよ」とも言う。

20歳前後のキラキラした青春時間をともにした仲間、でも最高の時間を一緒に過ごした=死ぬまで仲良しという訳ではない。それは、知りたくなかったけど目の当りにせずにはいられない“変化”で、認めることで「大人になる瞬間」をミキたちは体感したのだと思った。大人になることは時々苦しいけど…いまではそんな気持ちも愛おしい。

【チワワ役・吉田志織の狂気】
チワワを演じる吉田志織は、新人とは思えないほどコロコロ表情を変えていてすごかった。キラキラまぶしい存在であるがゆえに時々見せる“哀”の表情は、まさに狂気。ミキの言う「青春の自爆テロ」という言葉そのものだった。

【キモくて最高だった男たち】
チワワちゃんと恋愛する男たち、成田凌演じる吉田と浅野忠信演じるサカタ。2人とも歪み過ぎていて気持ち悪かった。潔い気持ち悪さが逆に気持ちよくて、さすがだった。

*****

華やかな青春時代を過ごしてきたわけではないので自分と重ねて観ることはできなかったけど、嫉妬・孤独・大人になる瞬間の変化など誰でもグっとくる描写がさりげなく散りばめられていてよかった。MVも作ってる監督とだけあって音楽あっての映像、という感じがした。

「チワワちゃんが死んじゃった 一緒に遊んでたわたしたちは チワワちゃんの本名すら知らなかった」人は孤独な生き物だ。
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