LalaーMukuーMerry

止められるか、俺たちをのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

止められるか、俺たちを(2018年製作の映画)
3.8
お前不満はないのか、それを映画にぶつけるんだよ。映画の中なら何やったっていいんだぞ。
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若松孝二監督の破天荒なワンマンぶりがもの凄い。この監督の映画は「実録、連合赤軍 あさま山荘への道程」しか見たことがないが、これは2007年の作品。彼の全盛時代(1970年頃、30代前半)の作品を私は見たことがない。映画を語る熱い言葉づかい、左翼学生運動家たちの檄文調を思い出す、時代を感じたなぁ。
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でも作り手の作りたい作品だけでは客が来ない。作りたい作品の資金稼ぎのために客に迎合する作品も作らなきゃいけない。そんなわけでピンク映画も同時につくって自転車操業していた独立系の若松プロダクション。
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その若松プロに助監督として参加した吉積めぐみの実話に基づく物語。調達と称して万引きとか、いまならこんな仕事をさせる会社はパワハラ、ブラック企業としてつるし上げられるに違いない。でも当時、映画業界でそこに疑問を持つ人は全くいなかった。
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必死に順応して、やがて若松プロを支えるピンク映画の監督までするようになる彼女だが、自分が何を作りたいのかわからぬまま映画を撮り続け、(女であることも含めて)切り捨てなければならないことを抱え込み、自分の中の矛盾が膨らんでいく・・・
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今の価値観から、彼女目線でこの作品を見るとちょっと辛いが、若松孝二というとんでもない監督がいたという時代に目を向ければ、今とのあまりの違いに驚くことでしょう。コンプライアンスだのポリティカルコレクトネスだのと細かいことに目くじらを立て、じわじわと管理の輪を狭めた今の時代がすっかりなくしてしまった、大胆な映画表現の自由が社会的に認められていた、よく言えばおおらかな時代。
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「女学生ゲリラ」「処女ゲバゲバ」「初夜の条件」「ゆけゆけ2度目の処女」「噴出祈願、15歳の売春婦」「性賊」・・・こんなの今じゃ絶対つくれない(てか今でも全然見る気がしない)。「赤軍-PFLP・世界戦争宣言」だけは見てみたい気もする・・・
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若松プロの映画つくりはどこかに影響を与えて、受け継がれているのだろうか? 何にも知らない素人(ワタシです)の素朴な疑問。