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騙し絵の牙のNEWおっさんのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
4.0
「面白いこと以外はどうでもいい」

「罪の声」などで知られる作家の塩田武士小説の映画化。主人公は、大泉洋をあてがきして描かれたので、主演はそのまま大泉洋。監督は傑作「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八。

タイトルや予告などから、騙し系のどんでん返し系かと思ったら、正直そんなに騙された感覚は無し。いやまあそういう場面もあるにはあるけど、「騙された!」みたいなカタルシスは薄い。

それよりも今のデジタル社会の波に揉まれてる出版業界の苦悩と希望を描いた映画だと思った方がしっくり来る。古くからやっている伝統ある出版VS新しいモノを取り入れて古さに捉われない体制の対決は見所があった。

「面白いことをしないと生き残れない」という速水の考え方も一理あるのも良い。炎上商法狙いの下りもこの映画にはあるが、まずは好き嫌いあろうが世間の人々を飛びつかせるコトが重要ってのも当たり前のようで、映画で実際描写されるとなんか納得いくものがある。いやまあこの炎上商法のきっかけ事件自体は唐突感満載で何の映画だよって思ったけど。

ラストのやられたらやり返すみたいな展開も個人的には溜飲が下がってカタルシスあったし、ちょっとサスペンス部分に期待し過ぎたとこもあってそこはガッカリ感あれど、デジタル化現代の縮図みたいなストーリーは面白かった。

Amazonなどネット業界が急成長している今、街の本屋は潰れたり縮小傾向にあるのが寂しくもある。この映画でもそういう部分を描いたりしてるが、これって本に限った話では無いし、ネットが便利になったところで、苦しんでる人達もいるんだなと改めて感じた。まあ自分はネットでしか買い物しないタチなんで偉そうなコト言えたもんじゃないです、すいません。