無知A

騙し絵の牙の無知Aのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
3.7
恐らく原作の小説は、文句なしの素晴らしい作品なのだろう。だが、映画としては、個人的に少し不満が残った。速いテンポで、矢継ぎ早に展開が変化していく点が、本作の見所だと思うのだが、あまりにも早すぎたように思う。見ていても退屈する事が無いので、これは非常に良い点でもあるが、一つ一つの内容が薄っぺらくも見えてしまう。簡潔に言い表すとすれば、抽象的という言葉がしっくり来るように思う 。というのも、話自体は面白いのだが、狙い目、焦点が定まっていないように思う。そして、強調されているポイントが分かりにくいので、掬っても掬っても、上澄みばかりが手元に来てしまう。言い方を変えるならば、掴み所がない、取り付く島がない。つまり、思考の余地を与えないテンポの早さが、観客を置き去りにしてしまっているように思う。

だが、話の流れは本当に秀逸だったと思う。オチを含めて、二転三転する物語には魅力を感じるばかりだ。大泉洋や佐藤浩市、リリーフランキーといったベテラン勢を筆頭に、独特な雰囲気を醸し出し、非常に味が出ていた。本作が評価されている理由には、俳優の活躍が大きなウェイトを占めているように感じる。

総じて、内容そのものは面白いが、考える余地や余韻が少ない作品だった。深さを求めるのであれば、本作の評価は、現時点の数字から大きく変動するだろうと私は考える。決して悪いとは思わないが、もう一手あればと思うのが本音である。


(内訳)
面白さ 4.1
学び 3.5
構造 3.6
無知A

無知A