おでい

騙し絵の牙のおでいのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
4.5
業界の闇みたいなテーマを扱う映画は、主人公がはめられて、重くて、見ていてしんどいものもある中で、こちらは痛快で、テンポ感良く、そして上手に伏線回収していく映画で面白かった。

主役という主役の感覚がなくて、どの主人公にもフォーカスが当たるし、みんなが策士みたいな展開なので、逆に深く考えず流されるままにエンディングまで突き進みました。

大泉洋演じるトリニティの編集長の役どころは、裏で勉強めっちゃしてるのに、試験勉強してないとか、辛いことあってもニコニコしていて、仕事忙しいのに、好きなゲームとか映画とか漫画とか見てて、いつそんなの見てる暇あるの?みたいな友達って1人くらいいると思うのだけれど、そんな感じの役どころで、まさにハマり役だと思う。

仕事だけど自分がやりたいこと、楽しめることを自信もってやろうよって感じで、リスクは承知だけど、リターンも考えて動くって言うのは、ゼロリスクを目指しがちな今の日本には欠けている部分で、この映画見て影響された人も多いんじゃないかなと。

なんか、あれもこれも作戦なので、例えばストーカー事件さえももしかすると思うつぼなのかもと考察してみたりで、よく練られたストーリーだと感じました。

最近の邦画って、例えばGoogleをちょっともじったり、YouTubeを少し変えたりって、それらしく改変して映画に出すことが多い中で、明らかにガストとか、Amazonだったり、そのまんま出てくるのがめちゃくちゃ良かった。

あと、この映画、今の出版業界の現状も語られており、無くなっていく一方の町の本屋さんや紙の本について改めて考えさせられる作品でもあります。
この映画見たら本屋さんに行きたくなるし、紙の本も買いたくなりますよね。
それにしてもこの題材でよくAmazonも名前使わせてくれたなって思いますよね。

コメディ要素も強いので、多数出ている大御所の面々の役どころは控え目ではあるものの、行き過ぎた感がないために見やすかった。
もちろん印象には残りにくく、この面子でこの演技と思われるかもしれないけれど、大物だけど出版社のいち社員、役員みたいな感じを出す分には余計な雑味は無かったと思います。

業界の汚い裏側みたいなのも描かれていて、出来レースとか手のひら返し、売上至上主義、計画的なリストラみたいなのもサラッと盛り込まれていて、そういう部分も妙に納得してしまう映画でした。

原作があるようなので読まれた方はまた違った感想を持たれるかと思いますが、あくまで映画しか知らない自分としては久しぶりに良い映画見たなって思えた作品でした。