TakuMori

騙し絵の牙のTakuMoriのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
4.9
赤字にもかかわらず聖域とされる文芸誌部署の若手編集者(松岡茉優)。新社長が文芸誌を季刊に縮小したことで雑誌部に異動になり、上司である編集長(大泉洋)の攻め気で大胆な戦略に振り回されていく。
そしてそれが会社内の出し抜き合いのコンゲームと、出版業界を巻き込んだ大きな展開へ向かっていく話。

いや〜めっちゃ面白かった。
業界ものとして出版社の内幕が描かれるのも面白いし、ストーリー展開が前フリと回収とで常に忙しくてとにかくテンポ良く展開が進む。話を追うだけであっという間に終わる。
情緒を煽るような演出や長いシーンは本当に一切ないけど、数多くいる出演者の感情がちゃんと描かれるし、それぞれの思いの交錯も騙し合いやどんでん返しもとにかく面白い。
エンターテイメント性がかなり高い上にちゃんとこの時代に合いつつ普遍的なメッセージ性もあり、最後の最後まで裏切ってくる着地と余韻が素晴らしい。
本当にクオリティの高い映画を観たと思った。
エンドロールで気付いたけど吉田大八監督か、、さすがだ。

特に印象に残ったのは銃オタクなモデル役の池田エライザのストーカーに追われた時の展開。予想外で驚かされたしその後の展開も社会的な問いがあったのがよかった。この映画の大きな見せ場だった。
あとは天才の新人作家の記者会見もか。あれは主人公に同情してしまったな、、

個人的にはなによりもメッセージが刺さった。
「難しいことの方が面白い」。
一言で言うとこれだと汲み取った。
仕事も人生もきっとそうだ。ワクワクする方に挑戦して、環境を利用して、遊べ。
どんな自己啓発本を読むよりも、この大泉洋が演じる上司像の方が刺激を受けるなあ。こういう大人になりたいと思った。
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