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映画 ホタルノヒカリのピトのレビュー・感想・評価

映画 ホタルノヒカリ(2012年製作の映画)
1.2
今作は「サイコパスの恐怖」という、通常であればサイコスリラーやホラーとして語られる題材を、全く異なるアプローチから描いた、ある意味邦画史に残る傑作である。

ストーリー的には、テレビの2時間ドラマにも劣るマジでクソめちゃくちゃなシナリオであるが、あくまでもサイコパスがゆえのストーリー展開と都合たてれば、ある程度は納得せざるを得ない。

今作におけるサイコパスは、まさに悪魔的な所業をはたらく存在。
宗教的世界観では、神とも同格な存在として語られる悪魔。
その悪魔≠神がもたらす災厄を描いたディザスタームービーとも言える作品が、この「映画 ホタルノヒカリ」なのだ。


そろそろ本題に入ろう、今作のサイコパス。
神であり悪魔とは…そう、誰あろう松雪泰子である。

一般的にサイコパスの特徴として言われるのは、平然とウソをつく、倫理観や良心の欠如、無責任で衝動的な行動、言葉巧みに他人の心理を操る、等があり、これがまさしく今作の松雪泰子にバッチリ当てはまるのである。


まず松雪の登場シーンだが、主人公綾瀬はるかの泊まる部屋にいきなりなんの断りもなく入って来て部屋中粗探しし始める。
そして新婚二人のスーツケースを勝手に開けてパンツまで被る始末。
松雪に倫理観や良心は微塵も存在しない。

更に旦那(藤木直人)のスーツケースに入ってた白い粉の入った袋(後で分かるが正体は白玉粉だ…!昭和のマンガかよ)をひと舐めし「覚せい剤だ!」と平然とウソをつく。
これだ!これこそサイコパスや…。

そして、突如訪ねてきた松雪の弟に対して、藤木直人を婚約者、綾瀬はるかは召使いだと、これまたサラッとウソをつく。
後に松雪自身が弟に語るが、ウソに理由などはないムシャクシャしてたからよと。
これは完全に犯罪者の供述である。
ニュースで聞く「犯人はムシャクシャしたからやったなどと供述している」のアレだ。

そして旦那の藤木直人は、出張を兼ねて新婚旅行に来てるので(こんな事あるの?)取引き先との接待で帰れない旨の連絡を綾瀬はるかに入れるが、その電話を代わった松雪は、衝動的に誘拐だとウソをつくのだ。
新婚旅行中の新妻に夫が誘拐されたと平然とウソをつける人間がこの世にいるだろうか?
これはもう人間ではない悪魔や!

更に翌朝、心配で一睡も出来なかった綾瀬はるかに向かって「(旦那は)死んだな…」と衝撃の一言を浴びせる!死人に鞭打つとはまさにこの事。
これにはマジでひっくり返りそうになった。
人にあらず、人の姿をした悪魔の所業、まさに下衆の極み。

そして居ても立っても居られず、一人で夫を探しに行くとホテルを飛び出した綾瀬はるかを、車で追いかけ「乗りな!」と善人面して颯爽と登場するのだ。
出た、これがマッチポンプか!これですよ。
そもそもおまえがついたウソでこんな事になってんのに「乗りな!」じゃないっーの。
ここまで来るともう綾瀬はるかは完全に身も心も松雪の支配下にあると考えていいだろう。


ここでもう一度、冒頭に述べたサイコパスの特徴を思い出して欲しい。
どうだろう?完璧に当てはまっているではないか。
これをサイコパスと言わずに何と言おう。
犯罪心理を研究したであろう作り手の丁寧な描写力に感服である。


この後は、車を乗り捨ててヒッチハイクしたり、ウエディングドレス着た綾瀬はるかがどじょうすくいしたり、ドレスを泥んこにしたりと正直もうどうでも良くて殆んど覚えてない…

これもサイコパスに精神的に支配された綾瀬がやったと思えばもう全て納得である。
全ては松雪=サイコパス=悪魔に出会ってしまった故の不幸なのだ。


ただ、最後まで観てひとつ思うのは、この様なサイコパスいや悪魔を生み出してしまった脚本家こそが、本当の悪魔なのではないかと…
ピト

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