むらむら

SPL 狼たちの処刑台のむらむらのレビュー・感想・評価

SPL 狼たちの処刑台(2017年製作の映画)
5.0

「プリズナーズ」と「闇の子供たち」とドラゴンボールの天下一武道会を一緒にして、「イップマン」を出場停止にしたみたいな作品。

タイのパタヤで娘を誘拐された香港の警察官リー(ルイス・クー)が、タイ警察のチュイ刑事(ウー・ユエ)や警察官のタク(トニー・ジャー)と協力して、誘拐事件の真相を探る、という内容。

監督ウィルソン・イップ、アクション指導サモハンなので、「イップマン」を思い浮かべる人もいそう。

実際、「イップマン」シリーズで見掛けた役者が結構出演してる。「最終章」で見事な太極拳裁きを見せたウー・ユエ。「最終章」でブルース・リーと死闘を繰り広げ、今回もヒール役として抜群の存在感を出してくれるクリス・コリンズ。「序章」に出てたラム・カートン(今回も悪役)……など、そこはかとなくイップマン感漂うキャスティング。

ただ、詠春拳は出てこないし、主人公の警察官クーは、イップマンの全部の臓器を取り替えても成り得ないくらいクズキャラ。だって、娘の妊娠が判明したら、相手の男を逮捕して、無理やり中絶させるんだぜ。

クズ親世界大会があったら、パチンコ屋で車に子供を置き去りにする親に次ぐくらいの上位にランクインしそうなクズ。

この織田信長ばりの暴君キャラに感情移入できるかどうかが、この作品の評価の分かれ目になりそうです。

それと、ポスターではウー・ユエの名前がなく、タイのアクション俳優・トニー・ジャーの名前がババーンと出ているが、これ、完全に誇大広告。

中盤、ビルの屋上で見事なアクションを披露してくれるのだが、その後「彼はお亡くなりになりました……」と、たった一言の台詞だけで退場。

えええーーっ!? さっき、あんなに大活躍してたのに、さらっとしすぎじゃね?? 

ここまでアッサリした退場の仕方は、何か裏があるんじゃないか? ラストのバトルで、主人公の脳裏にホワホワーっと浮かんできて、守護霊みたいな形で出てくるんじゃない? なんてワクワクしていたのだが、それもなし。完全にトニー・ジャーの無駄遣い。

ここまで無意味なトニー・ジャーの使い方するなら、いっそのこと振り切って「ここからはトニー・ジャーのムエタイコーナー」って、完全に余興扱いしても良かった。

ところで、この作品のクライマックス、警察が悪の組織を強襲するんだけど、信じられないくらい拳銃を撃ちまくるんだよね。戦争じゃないんだから……。この、ランボーの寄せ集めみたいなタイ警察の描写に、若干引いてしまう俺がいました。

なんかモヤモヤした感想になってしまいましたが、アクション映画を期待したらめっちゃ鬱展開するので、観終わったあとドヨーンってなります。

ぶっちゃけ、前作「ドラゴン×マッハ!(SPL2)」が、俺的には最高のアクション映画だったんですよ。

「イップマン マスターG」のマックス・チャンが悪役。ウー・ジンとトニー・ジャーと、善悪の彼岸を超えた三つ巴の争いを見せてくれて……心から熱い戦いを繰り広げてくれるんですね。なので、今回の「ミスト」的鬱々展開には、俺の中の「コレじゃないロボ」機能が発動してしまいました。すいません。

あ、ちなみにこの「SPL」シリーズ、出演者が被ってるってこと以外、物語的に何の繋がりもないので、どれから観ても大丈夫です! この作品がお気に召さなかった方も「SPL2」を是非!
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