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若おかみは小学生!のfumingのレビュー・感想・評価

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)
4.7
「子ども向け作品だと思ってたら、知らない内に泣いてしまっていた」
このような経験がある人は一定数居ると思うのだが、本作はそんなパターンの映画の最高クラスと言っても過言ではない。
物語は主人公の少女おっこが両親と死別するところから始まる。重い。そして、おっこは旅館を経営する祖母の家に引き取られ、タイトル通り若女将となって様々な人と出会い、色んな経験を通じて成長していく。
本作のテーマは、「大人への歩みと大切な人達との別れ」ではないだろうか。
主人公のおっこは冒頭で両親と別れ、その後出会う様々な人達や親友達ともやがて別れていくこととなる。別れは確かに悲しいものだ、しかし、そんな別れの辛さも美しい思い出があれば、人から心を貰うことが出来れば乗り越えて成長していけるのでは無いだろうか。人は忘れられない限り、誰かの中で生きている。そんな前向きで力強いメッセージを本作からは受けた。
とにかく脚本と作品テーマが良い一作だが、加えて作画や美術も素晴らしい。背景の淡く繊細で雄大な自然、どこか郷愁を呼び起こす旅館の舞台、細かく描写される登場人物たちの動作など製作の熱い気合が伝わってくる。また各々のキャラクターも立っている上に観ていて嫌になる人物も殆どいない。
とにかく、非常に丁寧に仕上げられた一作である。シナリオ、絵、音楽などほぼ全てが高いレベルでまとまっている。子ども向けアニメらしく笑いあるコミカルなシーンもあれば、思わず号泣してしまうような心を揺さぶられるシーンもあり、子どもも大人も一緒に楽しめる作品である。おっこの幸多き未来を願わずにはいられない。
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