アズマロルヴァケル

ファミリー☆ウォーズのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

ファミリー☆ウォーズ(2018年製作の映画)
3.6
未体験の低予算映画

・感想

新鋭、阪元裕吾監督の『ハングマンズ・ノット』が個人的にかなりの良作だったので初の商業映画である『ファミリー☆ウォーズ』がどんなものなのだろうかと
レンタルで視聴しました。

商業映画ではあるんだけど、『ハングマンズ・ノット』同様かなりの低予算映画。『ハングマンズ・ノット』はスリラー要素が強めだったんだけど、『ファミリー☆ウォーズ』は完全にコメディに振りきっているし、ちょっとしたどんでん返しもあるので良い意味で驚かされる。
この映画で阪元裕吾監督は残酷さだけでなく、低予算ならではの娯楽性を視聴者に提供してくれるのでまあ凄い。日本を代表する低予算映画がまた生まれてしまったなぁと思う。

なかでも見所なのが、クライマックスに展開される惨劇シーンで、福島一家の家にいる福島一家、祖父の伸介がひき逃げで殺した少女の両親とその仲間の不良たち、次男伸治のセフレ、次女奈央の同級生、長男アキヤとダッチワイフ、母美代子が連れてきた新興宗教団体、祖父の伸介が起こしたひき逃げ事件を捜査していた警察官、そして福島家の隣に住む隣人の松木が血で血を壮絶にバトルを繰り広げているんだけど、スリリングかつ痛快。特にアキヤとアキヤのダッチワイフ、沙莉が不良を倒すシーンはあまりにも空想的で過激!とにかく凄いとしか言いようがないし、奈央が拳銃で不良の指を撃ち落とすシーンなんか圧巻!奈央がアクション映画のヒロインのように目がキリッとしていて格好良かった。

それでいて、低予算映画ならではの笑える要素もあって、例えば、母親の美代子が家に連れてきた新興宗教の教祖様が古田新太みたいでとても個性的だったり、
長男のアキヤがダッチワイフを作ってセックスするシーンはとても笑えました。アキヤの見せ場の殆どは女性にはあまり見せられないけど……。

登場人物のいるなかで、唯一まともそうであり、一番の被害者だったのは次男の伸治のセフレ、メグでしょう。性格上は他人を信じやすい女性なんだろうけど、彼氏の伸治がテレビゲームに夢中なのであまり構ってくれなかったり、妊娠したのにも関わらず、伸治に暴力を振るわれたりとまあ胸糞。挙げ句の果てに最低な伸治に復讐しようと武器を持って戦ったのに、結局、伸治とアキヤによって殺されたりとまあ胸糞。一部の人しか知らないと思うけど、漫画『ホップステップはいキック』の主人公よりも救いがない。

ただ、中盤で長女の真弓がある事がきっかけで右腕を痛め、なんとか右腕の痛みを我慢してやり過ごそうとするんだけど、最終的に病院で右腕を切り落とされてしまうという下りがあるんだけど、
真弓が病院で右腕を切り落とされてしまう経緯が割りとあっさり描かれていて、
モヤモヤ感が残りました。多分、真弓が所属しているアイドルグループのメンバーが真弓を病院に運んだと思うんだけど、真弓が病院に行ったのは真弓以外のアイドルグループのメンバーが勝手に連れていったのか、それとも真弓が徒歩で行ったのかが不透明だったし、右腕を切り落とした医者がどういう人物だったのかがそんなに説明されていないのがとても惜しかったです。

それ以外にも色々と言いたいことはあるんだけど、映画ファン・B級映画ファンには純粋に笑えて楽しめる最高の低予算映画です。

※ちなみに、この映画には『カメラを止めるな!』でアル中俳優役を演じていた細井学さんが真弓の右腕を切り落とした張本人の医者役として登場しています。気になる方は是非。