おもと

軽い男じゃないのよのおもとのレビュー・感想・評価

軽い男じゃないのよ(2018年製作の映画)
3.7
男女の境遇がまるっと変わった世界。
奇妙に感じた筈の世界も1時間も観ていると違和感を忘れて、確かにこういう世界もあり得たかもしれないと思いだす。
実際鳥とか虫とか他の動物では雌が強く雄が着飾る事は珍しくないわけだし。

この世界で重要なのは、分かりやすく抜き出しつつも基本的にはただ反転しただけで過剰にも大げさにもなっていないってこと。それなのに失笑してしまうほど酷い世界に感じる。
何をするにもしょっちゅう掛かるキャットコール、ジャッジ、付き纏うルッキズム、性を売る男性、行動はいちいち軽視され重要なポストは殆ど女性が占めていて男性が着くと職業の頭に〝男性〟がくっ付く。そして自然の摂理を理由に浮気を繰り返す女性(妊娠でホルモン全開になってたから……という言い訳が最高)と諦観と共に寛容する男性という構図。
細部の反転も良い。クイーンが最強なカード、神の名称は彼女、神父ではなく神母、街頭に溢れるセクシーな男性ポスター。

最初は拒絶し〝男らしく〟あった筈の主人公もだんだん周囲に感化されて、脱毛をして短パンを履き言葉遣いが柔らかくなり慎ましい仕草で恋愛ドラマを観て暖かい飲物を淹れ男子会をしだすし、恋愛で不誠実に裏切られて「ヒステリー」を起こす。この世界の〝男らしさ〟を得ていく。

ネガポジになることでその不平等さが明確になり、自分の感覚を揺さぶられる感じがシンプルでわかりやすい。
最後の終わり方も綺麗で好きだな。

あとアレクサンドラ役のマリー・ソフィー・フェルダンさん、カッコいいな…!紺色のスーツ姿がスマート!

軽やかでテーマが明確。オリジナルとはいえネトフリ専有じゃ勿体ない出来。地上波で流してほしいな。
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