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返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻すのKUBOのレビュー・感想・評価

3.0
「僕、決めたよ。沖縄を取り戻す! ニッポンを取り戻す!」

沖縄返還のために尽力した外交官 千葉一夫の実話に基づいた物語。

「アメリカ軍は保護の名目で沖縄県民を収容所に入れ、その間に土地を収奪、終戦後、各所に基地を作った。」

「日本はサンフランシスコ講和条約により国際社会に復帰することになる。しかし、その時、沖縄は日本から切り離された。」

仲代達矢のナレーションが良い。

「核なし、本土並み」での返還を目指して、文字通り奮闘する千葉だが、トップレベルで「密約」をちらつかせる米側との溝はなかなか埋まらない。

職員たちは、壁にぶつかる度に「Once more unto the breach, dear friends.」を合言葉に諦めずに立ち向かう。

「日本もいつかアメリカと対等に口をきける国になる」という台詞があるが、未だになっていない。大いなる皮肉だろう。

「自分の一挙手一投足で、国が右へ行くか、左に行くか決まる。それが外交官だ。」アメリカの顔色ばかり見ている政治家たちに聞かせてやりたい台詞だ。

70年の「コザ騒動」なども短い記録フィルムにとどめており、詳しくないものには何があったのかわかりにくい。この辺りは、ぜひ昨年公開の「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」と合わせて見ると良い。

「沖縄の子供たちは国籍を聞かれてなんて答えたらいいのか? 変換されても基地は残る。国際的地位が曖昧なまま、アメリカの植民地状態が続くことを、子供たちにどう説明すればいいのか?」今も残る基地問題の根本を問う台詞だ。

作られることに、たいへん意義のある作品だと思う。それだけに…

残念ながら、主演の井浦新が、英語の部分も、日本語の部分さえ、芝居が一本調子で力が入りすぎている。「シン・ゴジラ」の石原さとみのようだ、と言えばわかってもらえるかな?

笑っちゃうのは奥さん役の戸田菜穂が全出演者中、一番英語が流暢だったりする。

屋良主席の役はウチナンチュの役者にやってほしかった。石橋蓮司には、少なくとも沖縄のイントネーションくらい勉強して台詞言ってほしかったな〜。

中学生も絶対ウチナンチュじゃないし(^^)。沖縄っぽく言おうとして変なイントネーションになってる。内地で撮影しちゃう都合上、内地の子役に適当に教えてやらせたんだろうけど、こういうのは最悪。

吉田妙子、津波信一、新垣正弘など、沖縄では有名な俳優さんも出演しているが、どれもちょい役。沖縄のドラマを作ってるのに、沖縄の俳優がちょい役って時点で、俳優内でもウチナンチュが軽視されてるみたいでイヤだ。

ただし、今は亡き「大杉漣」がイヤな役ながら重要な役で出演しているのは貴重。

いろいろ書いたが、沖縄に関心のある方は見る価値はある。ただ、劇場用作品としては、ツメが甘いのも事実。もっと細部までこだわって作ってほしかった。
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